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遺言書の自宅保管は危険?紛失・改ざんリスクと安全な保管方法を解説

遺言書は、ご自身の最後の意思を家族に伝えるための大切な書類です。手軽に作成できる自筆証書遺言を書き、そのまま自宅で保管しようと考える方は少なくありません。しかし、その手軽な保管方法には、遺言者の大切な意思が無駄になってしまう多くの危険が潜んでいます。この記事では、自筆証書遺言を自宅で保管することの具体的なリスクと、より安全で確実な保管方法について、専門家の視点から分かりやすく解説します。
自筆証書遺言の自宅保管、その深刻なリスクは
自筆証書遺言を自宅で保管すること自体は、法律上問題ありません。しかし、実際には多くのトラブルの原因となっています。具体的にどのようなリスクがあるのか、見ていきましょう。
リスク1:遺言書が無意味になる可能性
遺言書そのものが機能しなくなってしまうリスクです。
- 発見されない
遺言書の存在を家族が誰も知らなかった場合、遺品整理の際に見つけられず、遺言がないものとして遺産分割協議が進んでしまうことがあります。 - 紛失・汚損
引っ越しやリフォームの際にどこに置いたか分からなくなったり、地震や火災といった災害で失われたりする可能性があります。また、長期間の保管により、湿気や虫害で読めなくなったり、インクが劣化して内容が判別できなくなったりすることも考えられます。 - 誤って破棄される
家族がただの紙切れだと思い、誤って捨ててしまうケースも少なくありません。
リスク2:第三者による不正行為の可能性
遺言書の内容に不満を持つ相続人などが、意図的に不正を働くリスクです。
- 隠匿・破棄
自分にとって不利な内容が書かれていると知った相続人が、遺言書を隠したり、燃やしてしまったりする可能性があります。 - 改ざん・偽造
遺言書の内容を自分に都合よく書き換えられてしまうリスクもあります。 - 対策と限界
対策として鍵のかかる引き出しや金庫で保管する方法が考えられますが、これらのリスクを完全に防ぐことは困難です。民法では、遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した相続人は相続権を失う(相続欠格)と定められていますが、その不正行為を証明することは現実的に難しい場合が多いのが実情です。
自宅保管の遺言書に必須の「検認」手続きとは
法務局の保管制度を利用せず、自宅などで保管されていた自筆証書遺言が発見された場合、家庭裁判所での「検認」という手続きが法律で義務付けられています。
検認の目的
検認は、遺言書の偽造や変造を防ぐため、発見された時点での遺言書の形状、日付、署名といった状態を明確にし、その内容を相続人全員に知らせるための手続きです。重要なのは、検認は遺言書が法的に有効かどうかを判断するものではないという点です。
手続きの流れと期間
この手続きは、亡くなった方(被相続人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。その後、家庭裁判所から相続人全員に通知がなされ、手続きが完了するまでには通常1ヶ月から3ヶ月程度の期間を要します。
開封時の注意点
封印のある遺言書は、この検認の手続きの中で家庭裁判官が相続人の前で開封しなければなりません。発見者が勝手に開封してしまうと、5万円以下の過料に処される可能性がありますので、絶対に自分で開けないでください。
やってはいけない保管場所:貸金庫の落とし穴
金融機関の貸金庫は安全そうに思えますが、遺言書の保管場所としては非常に危険な選択肢です。
金融機関は、口座の名義人が亡くなったことを知ると、預金口座だけでなく貸金庫も凍結します。凍結された貸金庫を開けるためには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本一式に加え、相続人全員の同意と立ち会いが必要になります。
もし相続人の中に疎遠な人や、関係が良好でない人が一人でもいれば、全員の協力を得るのは極めて困難です。さらに、多くの金融機関は手続きに柔軟性がなく、代理人の出席を認めないケースがほとんどです。最悪の場合、遺言書を永久に取り出せなくなり、遺言者の意思が全く実現できなくなってしまう可能性があります。
自宅保管に代わる有力な選択肢「法務局の遺言書保管制度」
制度の概要
作成した自筆証書遺言の原本と、その画像データを法務局が保管してくれる制度です。
メリット1:紛失、隠匿、改ざんの防止
紛失・改ざん等の防止 原本を法務局が保管するため、自宅保管で懸念される紛失、隠匿、改ざんといったリスクが一切なくなります。保管期間は、原本が遺言者の死亡後50年間、画像データは150年間と非常に長期間です。
メリット2:検認手続き不要
この制度を利用した遺言書は、相続が開始した後の家庭裁判所での検認手続きが不要になります。これにより、相続手続きを迅速かつスムーズに開始できるという大きな利点があります。
メリット3:形式不備のリスク軽減
保管を申請する際に、法務局の職員が、日付や署名など法律で定められた形式を満たしているか外形的なチェックをしてくれます。これにより、形式的な不備で遺言が無効になってしまうリスクを減らすことができます。ただし、遺言の内容が有効かどうかまで保証するものではありません。
メリット4:相続人による発見が容易
相続人は、全国どこの法務局でも遺言書の有無を確認できます。また、相続人のうちの一人が遺言書を閲覧したり証明書の交付を受けたりすると、他の相続人全員にその旨が通知される仕組みになっており、情報が公平に共有されます。
メリット5:死亡時の通知制度で発見を確実に
遺言者は、生前に希望すれば、指定した人物1名(親族、知人、専門家など)に対して、自分の死後に法務局から遺言書が保管されていることを通知してもらう「死亡時通知」の仕組みを利用できます。これにより、遺言書の存在が誰にも知られずに相続手続きが進んでしまうというリスクを、より確実に防ぐことができます。
費用
申請手数料は遺言書1通につき3,900円です。公正証書遺言の作成に比べて費用を大幅に抑えることができます。
注意!法務局保管制度が「落とし穴」になるケース
多くのメリットがある法務局の保管制度ですが、利用するとかえって深刻な問題を引き起こすケースがあります。
問題となるケース
それは、法定相続人ではない第三者、例えばお世話になった知人などに財産を遺したい(遺贈したい)場合です。
具体的な問題点
相続が始まった後、遺言書の内容を確認するための「遺言書情報証明書」を法務局に請求するには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本一式と、法定相続人全員の戸籍謄本などが必要になります。
戸籍謄本が取得できない可能性
財産を受け取るはずの第三者(受遺者)は親族ではないため、これらの戸籍謄本を自力で収集することは原則としてできません。その結果、遺言書に書かれているにもかかわらず、手続きを進められず、財産を受け取れないという最悪の事態に陥る可能性がございます。
結論
このため、法定相続人以外の人に財産を遺したいと考えている場合は、法務局の保管制度ではなく、次に説明する公正証書遺言などを検討すべきです。
どの保管方法を選ぶべきか?より確実な方法とは
これまで解説した内容を踏まえ、各保管方法を比較してみましょう。
| 保管方法 | 安全性 | 検認手続き | 費用 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 自宅で保管 | 低い(紛失・改ざん等のリスクあり) | 必要(1~3ヶ月) | かからない | 発見されない、貸金庫は避けるべき等のリスク |
| 法務局で保管 | 高い | 不要 | 3,900円 | 相続人以外への遺贈では手続きが困難になる場合がある |
法務局保管制度の弱点もカバーし、最も確実性が高い遺言の方式が「公正証書遺言」です。これは、公証人が作成に関与し、原本が公証役場に厳重に保管されるものです。そのため、形式不備で無効になるリスクや、紛失・改ざんのリスクはほとんどありません。もちろん、検認手続きも不要です。費用はかかりますが、相続人以外への遺贈を考えている場合など、内容が複雑なケースでは最適な選択肢と言えるでしょう。また、自筆証書遺言の作成や保管について、専門家に相談するという方法もあります。
まとめ
自筆証書遺言を手軽に作成し自宅で保管することは、一見簡単ですが、紛失、改ざん、そして誰にも発見されないという、遺言者の最後の意思を完全に無駄にしてしまう深刻なリスクを伴います。法務局の保管制度はこれらの危険を効果的に軽減する優れた選択肢ですが、法定相続人以外の方へ財産を遺す場合には、手続き上の障壁から不向きであるという致命的な欠点も理解しておく必要があります。したがって、最適な保管方法を選ぶには、ご自身の状況を慎重に考慮することが不可欠です。もし内容が複雑であったり、相続人以外への遺贈を考えていたりする場合には、最も安全な公正証書遺言が確実な選択肢となります。少しでも不安があれば、司法書士や行政書士といった法律の専門家に相談し、ご自身の意思が確実に実現される道筋を整えることを強くお勧めします。


