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一身専属権と相続の関係|資格・年金・身分に関する権利の扱い

「亡くなった父の借金も相続しなきゃいけないの?」「母が持っていた資格や年金はどうなるんだろう?」
身近な人が亡くなった際、多くの方が直面するのが相続の問題です。通常、現金や不動産といった財産は、持ち主が誰であっても価値が変わらないため、当然のように家族へと受け継がれていきます。
しかし、世の中には「その人本人にしか認められない、他人が代わりを務めることができない性質の権利」が存在します。これが、今回解説する「一身専属権(いっしんせんぞくけん)」です。
「一身専属」とは、文字通り「その人の身ひとつに専属している」という意味。本人と密接に結びついた特別な権利であるため、たとえ家族であっても引き継ぐことはできず、本人の死とともに消滅してしまいます。
この記事では、知っているようで知らない「相続の例外ルール」について、具体的な事例を挙げながら、行政書士の視点でわかりやすく解説します。
相続の基本ルールとその例外
相続が始まると、まず基本となるのが「包括承継」という考え方です。これは、被相続人(亡くなった方)が所有していた土地や預貯金といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も、原則としてすべて相続人に引き継がれるという相続の基本ルールです。
しかし、このルールには例外が存在します。それが「一身専属権(いっしんせんぞくけん)」と呼ばれる権利です。これは被相続人個人のみに認められる特別な権利であり、相続の対象にはなりません。
この例外は、法律にも明確に定められています。
民法 第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りではない。
このように、一身専属権は法律で定められた相続の例外なのです。
一身専属権とは具体的にどのような権利か?
一身専属権とは、「その人だからこそ持っている権利」と言うことができます。個人の人格、身分、あるいは当事者間の個人的な信頼関係と密接に結びついているため、他の人(相続人)には引き継がれない性質を持つ権利のことです。簡単に言えば、「その人の免許証で、子どもが車を運転できない」のと同じように、持ち主本人と切り離せない権利のことです。
一身専属権には、主に以下の3つの特徴があります。
- 相続の対象にならない
- 他人に譲渡することができない
- 差し押さえの対象にもならない
相続されない一身専属権の具体例
それでは、相続の対象とならない一身専属権には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、代表的な例をカテゴリーに分けてご紹介します。
資格や地位に関するもの
被相続人個人が、その能力や信頼に基づいて得た資格や社会的地位は、一身専属権にあたるため相続されません。
- 医師、弁護士、税理士などの国家資格(相続人が同じ能力や知識を持つとは限らないため)
- 運転免許
- 会社員や公務員といった雇用契約上の地位
- 組合員の地位
- 身元保証人としての地位
生活や扶養に関する権利
個人の生活状況に応じて与えられる公的な権利や、親族間の扶養に関する権利も、その人個人に属するものとして相続の対象外となります。
- 生活保護受給権(受給資格は個人の経済状況に基づいて審査されるため)
- 年金を受給する権利
- 扶養請求権(親族に対して生活の援助を求める権利)
- 公営住宅の使用権
ただし、注意点があります。これらの権利そのものは相続されませんが、被相続人が亡くなる前にすでに発生し、まだ支払われていなかった具体的な金銭(例えば、未払いの年金や確定した婚姻費用など)は、単なる金銭債権として相続財産に含まれる場合があります。
家族関係や身分に関する権利
夫婦や親子といった特定の身分関係に基づいて発生する権利も、その当事者のみに属するため相続人には引き継がれません。
- 親権者の地位
- 離婚請求権
- 婚姻費用の分担請求権
- 配偶者居住権・配偶者短期居住権
その他の権利
上記のカテゴリーには当てはまらない、その他の代表的な一身専属権には以下のようなものがあります。
- 著作者人格権 著作者の精神的な利益(公表権、氏名表示権など)を守る権利です。財産的な価値を持つ「著作権」そのものとは区別されます。
- 代理権 本人との個人的な信頼関係に基づいて与えられる権限のため、本人が亡くなると消滅します。
- 使用貸借における借主の地位 無償で物を借りる契約は、貸主と借主の個人的な信頼関係が基礎となっているため、借主が亡くなるとその地位は相続されません。
相続されるものと間違えやすい権利
一身専属権の判断は専門家でも慎重に行いますが、相続される債務や権利と混同しやすいケースを3つ解説します。
「身元保証人としての地位」と「保証債務」
「身元保証人としての地位」は一身専属権であり相続されません。しかし、被相続人が第三者の借金の「保証人」になっていた場合の保証債務は、通常の債務として相続人に引き継がれます。
「著作者人格権」と「著作権」
著作者の精神的な利益を守る「著作者人格権」は相続されません。一方、経済的な利益を得るための財産権である「著作権」は、相続財産に含まれます。
「公営住宅の使用権」と「借家権」
「公営住宅の使用権」は一身専属権であり相続の対象外です。これに対し、一般的なアパートやマンションなどの「建物の借家権」は、相続の対象となります。
まとめ
今回は、相続の対象とならない「一身専属権」について解説しました。相続では、プラスの財産もマイナスの財産もほとんどの権利義務が相続人に引き継がれますが、故人との信頼関係や個人の身分に基づいた一身専属権は、その例外として相続されないということを覚えておきましょう。
相続手続きは、ただでさえ心労が重なる時期に行わなければなりません。財産の中に相続対象になるか判断に迷う権利が含まれている場合、ご自身だけで抱え込まず、私たち専門家へお気軽にご相談ください。正確な財産調査と円満な相続の実現をサポートいたします。



