甥や姪に財産を相続させたくない方へ:遺言書作成で実現する確実な方法

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お子さんがいらっしゃらない、いわゆる「おひとりさま」の方で、ご兄弟とは疎遠であったり、甥や姪とは全く面識がなかったりする場合、「自分の財産が、関係のない親族に渡ってしまうのではないか」というご心配を抱えている方は少なくありません。

結論から申し上げますと、何も対策をしなければ、法律の定めにより、ご兄弟や甥・姪があなたの財産を相続することになります。しかし、ご安心ください。法的に有効な「遺言書」をきちんと作成しておくことで、あなたの財産を、本当に渡したいと願う人や団体へ確実に遺すことができます。本稿では、我々のような相続専門家が日々実務で扱っている知見に基づき、その具体的な仕組みと確実な方法を解説します。

目次

なぜ何もしないと甥や姪が相続人になるのか?相続の仕組み

遺言書がない場合、民法で定められた「法定相続人」が財産を相続します。誰が相続人になるかには、明確な順位が定められています。

法定相続人の順位

優先順位相続人条件
常に配偶者
第一順位子 (または孫など)
第二順位直系尊属 (両親など)第一順位がいない場合
第三順位兄弟姉妹 (または甥・姪)第一順位も第二順位もいない場合

「おひとりさま」の相続と「代襲相続」

ここでいう「おひとりさま」とは、お子さんがおらず、ご両親もすでに亡くなっており、独身または配偶者に先立たれた方を指します。この場合、第一順位と第二順位の相続人がいないため、第三順位である兄弟姉妹が法定相続人となります。

さらに重要なのが「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」という制度です。これは、本来相続人となるはずの兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合に、その子供、つまりご本人から見て甥や姪が、親の代わりに相続権を引き継ぐという仕組みです。この「代襲相続」という制度こそ、面識のない親族が突然、ご自身の財産をめぐる当事者として現れる法的な根拠となるのです。

遺言がない場合の「兄弟姉妹相続」が“争族”になりやすい理由

相続の現場では、兄弟姉妹や甥・姪が関わる案件が最も解決困難な「争族」に発展しやすい、というのが我々専門家の共通認識です。その主な理由を3つご紹介します。

理由①:戸籍収集が大変複雑

相続手続きの第一歩は、相続人全員を確定させることです。そのためには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本はもちろん、両親や兄弟姉妹の戸籍も遡って収集する必要があります。相続人の数が多くなると、集めるべき戸籍は40通以上になることも珍しくなく、膨大な手間と時間がかかります。

理由②:疎遠な相続人との遺産分割協議ができない

遺産の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が必要です。これを「遺産分割協議」と呼びます。しかし、相続人が何十年も会っていない兄弟姉妹や、一度も会ったことのない甥・姪である場合、全員で話し合い、満場一致で合意に至るのは現実的にほぼ不可能です。結果として、手続きが完全に停滞してしまいます。

理由③:手続き完了までに膨大な時間がかかる

遺言書がない場合、比較的スムーズに進んだケースでさえ、手続き完了までに最低でも半年程度の時間がかかります。もし相続財産に不動産が含まれている場合、評価や分割方法を巡ってさらに意見が対立しやすく、手続きの難易度と所要時間は大幅に増加します。

甥や姪に財産を渡さない最も確実な方法は「遺言書」

ご自身の意思に反して兄弟姉妹や甥・姪に財産が渡ることを防ぐ、最も確実かつ強力な方法が「遺言書」の作成です。遺言書に記された内容は、法律で定められた相続の順位(法定相続)よりも優先されるからです。

最大のポイント:兄弟姉妹・甥姪には「遺留分」がない

「遺留分(いりゅうぶん)」とは、配偶者、子供、親といった一部の法定相続人に法律上保障された、最低限の遺産の取り分のことです。たとえ遺言書に「全財産を愛人に遺す」と書かれていても、配偶者や子供は自身の遺留分を請求する権利があります。

しかし、ここが決定的に重要なポイントです。民法上、兄弟姉妹、そしてその代襲相続人である甥・姪には、この遺留分が一切認められていません。これは、あなたが「全財産をお世話になったAさんに遺贈する」という法的に有効な遺言書さえ作成すれば、ご兄弟や甥・姪は法的に1円も請求する権利がなく、遺留分を根拠に異議を申し立てることすらできない、ということを意味します。この「遺留分がない」という事実こそが、このケースにおいて遺言書が絶対的な効力を持つ最大の理由です。

財産は誰にでも遺せる「遺贈」

遺言書を使えば、法定相続人以外の人や団体に財産を譲ること、すなわち「遺贈(いぞう)」が可能です。これにより、あなたはご自身の財産を誰に託すかを自由に決めることができます。

  • お世話になった人(親しい友人、ヘルパーさんなど)
  • 内縁関係にある人
  • お世話になった病院や施設
  • 慈善団体(日本赤十字など)やNPO法人
  • 住んでいた自治体

【具体例】遺言がある場合 vs ない場合の手続きの比較

法定相続人が10名(兄弟姉妹と甥・姪)いる方が、財産1000万円を、介護をしてくれた妹一人にすべて遺したいと考えていたケースで比較してみましょう。

遺言がないケース

  1. 戸籍収集: 専門家に依頼しても、相続人全員を確定させるだけで2~3か月かかります。
  2. 財産調査: すべての財産を把握するのに1か月程度かかります。
  3. 相続人への連絡と協議: 10名全員に通知し、協議を試みますが、そのうち一人でも法定相続分を主張する相続人がいると、協議は不成立に終わります。このやり取りだけで数カ月かかる場合もあります。
  4. 結果: 故人の「妹にすべてを」という意思は全く反映されず、結局は法律に従って10名で財産を分けることになります。故人が生前、最後まで気にかけていた妹様への想いは完全に無視され、事務的かつ無情な結果に終わります。

遺言があるケース(公正証書遺言)

遺言書で「全財産を妹に相続させ、遺言執行者も妹に指定する」と定めていた場合、手続きは非常にシンプルです。

遺言執行者に指定された妹は、単独で金融機関等の解約・名義変更手続きを進めることができます。他の兄弟姉妹や甥・姪には遺留分がないため、法的な請求をされる心配もありません。結果として、故人の意思は迅速かつ完全に実現されます。

なお、遺言執行者の義務として、他の兄弟姉妹や甥・姪に対して、故人が亡くなった事実と遺言の内容に沿って手続きを進める旨を通知するのが一般的です。しかし、これはあくまで報告であり、彼らに手続きへの同意を求めたり、異議を申し立てる権利を与えたりするものではありません。

確実に想いを実現するために

あなたの最後の意思を確実に形にするための、最終的なアドバイスです。

公正証書遺言の作成を推奨

遺言書には自筆で書くものもありますが、形式的な不備で無効になるリスクがあります。その点、公証役場で作成する「公正証書遺言」は、法律の専門家である公証人が関与するため、最も確実で信頼性の高い方法です。後の相続手続きもスムーズに進みます。

その他の対策(生前贈与・相続人廃除)の注意点

遺言書以外に「生前贈与」「相続人廃除」といった方法もあります。しかし、そこには注意すべき落とし穴が存在します。例えば、家庭裁判所に申し立てて兄の「相続人廃除」が認められたとします。これで一安心と思いきや、廃除された兄の子供(甥)は「代襲相続」によって相続権を得てしまうのです。

このように、特定の人を相続から「除外」する対策は、代襲相続という思わぬ抜け穴によって無力化される危険を伴います。最も確実なのは、遺言書で「誰に財産を遺すか」を積極的に指定し、他の相続人が介入する余地を完全に断つことです。

まとめ:あなたの財産と想いを守るために、専門家へ相談を

最後に、本記事の要点をまとめます。

  • 子供や親がいない場合、何もしなければ疎遠な兄弟姉妹や甥・姪が財産を相続します。
  • 遺言がない相続は手続きが非常に煩雑で、親族間のトラブル(争族)に発展しがちです。
  • 甥や姪には遺留分がないため、「特定の人に全財産を相続させる」という内容の遺言書を作成すれば、彼らが財産を相続することはありません。
  • あなたの最後の意思を確実に実現するため、相続に詳しい行政書士などの専門家に相談し、法的に有効な遺言書を作成することをお勧めします。
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