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遺言の正しい読み方は?「ゆいごん」と「いごん」の違いから分かる遺言書の基本

「遺言」という言葉を、「ゆいごん」と読むべきか、それとも「いごん」と読むべきか、迷ったことはありませんか?相続のご相談にいらっしゃるお客様から、「この言葉、どう読めばいいのですか?」と質問されることがよくあります。
実は、どちらの読み方も使われていますが、特に法律の世界では明確に意味が区別されています。この違いを理解することは、ご自身の最後の意思を確実に実現し、大切なご家族が将来争うことを防ぐために非常に重要です。
この記事では、「ゆいごん」と「いごん」の違いを分かりやすく解説し、法的に有効な遺言書を作成するための基本を網羅的にご紹介します。ご自身の想いをきちんと受け取ってもらうために、ぜひ最後までお読みください。
遺言の読み方、「ゆいごん」と「いごん」の決定的な違い
まず結論から言うと、「遺言」の読み方として「ゆいごん」も「いごん」も間違いではありません。しかし、使われる場面や意味合いが異なります。
広い意味を持つ「ゆいごん」
「ゆいごん」は、より一般的で広い意味を持つ言葉です。法律上の形式や効力に関わらず、「死後のために言い残す言葉全般」を指します。いわば、残された人への最後のメッセージです。
具体的には、以下のようなものが「ゆいごん」に含まれます。
- 家族や親しい人に宛てた手紙
- ビデオレターや録音テープ
- エンディングノート
- ブログや日記
これらは故人の想いを伝える大切なものですが、これだけでは法的な手続きを進める力はありません。
法律用語としての「いごん」
一方、「いごん」は、弁護士、司法書士、そして私たち行政書士のような法律の専門家が使う法律用語です。これは、民法で定められた厳格な方式に従って作成され、死後に法律上の効力を発生させる目的で作られた意思表示を指します。
最大の違いは「法的効力」の有無
この二つの言葉の最も重要な違いは、「法的効力」があるかないかです。
法的に有効な「いごん」であれば、それに基づいて銀行預金の名義を変更したり、不動産の所有権を移転したりといった相続手続きを進めることができます。しかし、手紙などの形式的な要件を満たさない「ゆいごん」では、たとえ故人の意思が明確であっても、これらの手続きを行うことはできません。
この違いを下記の表にまとめました。
| 読み方 | 意味 | 法的効力 |
|---|---|---|
| ゆいごん | 死後のために言い残す言葉全般(広義) | 無いものも含まれる |
| いごん | 民法で定められた方式に従った、法的に有効な意思表示(狭義) | ある |
法的に有効な遺言書(いごんしょ)とは?
遺言が法的な拘束力を持つためには、法律で定められた方式で作成された「遺言書(いごんしょ)」でなければなりません。専門家が「いごん」と言う場合、この法的に有効な遺言を指しています。
遺言書によって法的に定めることができる主な事項(遺言事項)は以下の通りです。
相続に関する事項
相続分の指定、遺贈、相続人の廃除など。 例えば、介護でお世話になった長男の妻(法定相続人ではない)に財産を遺す「遺贈」や、特定の相続人から相続権を奪う「廃除」がこれにあたります。
財産の処分に関する事項
寄付など。 例えば、ご自身の財産の一部を、お世話になった団体や母校へ「寄付」する旨を定めることができます。
身分に関する事項
婚姻関係にない男女間の子供の認知など。 例えば、婚姻届を出していないパートナーとの間に生まれた子を、法的に自分の子として認める「認知」がこれにあたります。
遺言執行に関する事項
遺言の内容を実現する遺言執行者の指定など。 例えば、相続手続きをスムーズに進めるために、信頼できる人や専門家を「遺言執行者」として指定することができます。
遺言書の3つの方式を徹底比較
法律で認められている遺言書(普通方式の遺言)には、主に3つの種類があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、ご自身の状況に合わせて最適な方式を選ぶことが大切です。
方式1:公正証書遺言【最も確実性が高い】
公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口述し、法律の専門家である公証人が作成する遺言書です。
- メリット
- 法律の専門家である公証人が作成するため、形式不備で無効になるおそれが極めて低い。
- 原本が公証役場に保管されるため、紛失、偽造、改ざんのリスクがない。
- 遺言者の死後、家庭裁判所での「検認」手続きが不要で、速やかに相続手続きを開始できる。
- 作成時に公証人が本人の意思能力や真意を直接確認するため、後日「認知症で判断能力がなかった」といった主張で無効とされるリスクが極めて低くなります。
- デメリット
- 作成に公証人手数料がかかる。
- 証人が2人以上必要になる。
- 遺言の内容が公証人と証人に知られる。
方式2:自筆証書遺言【手軽だが注意が必要】
自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文、日付、氏名をすべて自分で書き、押印して作成する遺言書です。
- メリット
- 紙とペン、印鑑があればいつでも作成でき、費用がほとんどかからない。
- 遺言の存在や内容を秘密にできる。
- デメリット
- 法律で定められた形式に従っていないと無効になるリスクがある。
- 自宅などで保管した場合、紛失、盗難、改ざん、隠匿のおそれがある。
- 相続人に発見されない可能性がある。
- 原則として、死後に家庭裁判所で「検認」の手続きが必要となり、手間と時間がかかる。
自筆証書遺言の弱点を補う「法務局保管制度」
この自筆証書遺言の持つ古くからの弱点を大幅に解消するために、2020年7月に画期的な制度が開始されました。それが「自筆証書遺言書保管制度」です。これは、作成した自筆証書遺言を法務局で預かってもらえる制度です。
この制度を利用することで、以下のようなメリットがあります。
- 法務局で原本が保管されるため、紛失や改ざんのリスクがなくなる。
- 申請時に形式的な要件をチェックしてもらえるため、方式不備で無効になるリスクが軽減される。
- 家庭裁判所での検認が不要になる。
- 相続人は、遺言者の死後、全国の法務局で遺言書の有無を確認できる。
方式3:秘密証書遺言【利用は稀】
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、その存在だけを公証人と証人に証明してもらう方式です。公証人が内容の有効性を確認するわけではなく、死後には家庭裁判所の検認も必要となるため、手間がかかる割にメリットが少なく、現在ではほとんど利用されていません。
遺言書を作成する際の重要ポイント
ご自身の想いを確実に実現するため、遺言書を作成する際には以下の点に注意しましょう。
トラブルを防ぐための必須知識「遺留分」
遺言者は原則として自由に財産の分け方を決められますが(遺言自由の原則)、法律は配偶者、子、親といった一定の相続人に対して、最低限保障される遺産の取り分として「遺留分」を定めています。実務上、この遺留分を無視した遺言書が、最も深刻な相続トラブル(「争族」)の火種となります。遺言書を作成する最大の目的の一つは争いを防ぐことですから、この点には細心の注意が必要です。
重要な点として、兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
相続をスムーズに進める「遺言執行者」は必ず指定しましょう
遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実現するために必要な手続きを行う人です。具体的には、遺言執行者は単独で預貯金の解約や不動産の名義変更(相続登記)といった手続きを進める権限を持ちます。これにより、相続人全員の実印や印鑑証明書を集める煩雑な手間を省略できます。あらかじめ遺言書で信頼できる人や専門家を遺言執行者に指定しておくことで、死後の相続手続きが格段にスムーズに進みます。
いつ書くべきか?判断能力と「書き直せる」という安心感
遺言書が法的に有効であるためには、作成時に十分な判断能力(遺言能力)が必要です。例えば、認知症が進行した状態で作成された遺言は、後から無効と判断される可能性があります。
だからこそ、心身ともに健康なうちに作成しておくことが重要です。そして何より知っておいていただきたいのは、遺言書は何度でも書き直すことができるということです。状況が変われば、いつでも新しい内容に更新できます。早すぎるということはありませんので、安心して作成を検討してください。
想いを伝える「付言事項」で円満な相続を
法的な効力はありませんが、「付言事項」は遺言書の中で最も重要な部分の一つかもしれません。なぜなら、財産配分の「なぜ」を伝えることができるからです。「長男に家を相続させるのは、同居して最後まで面倒を見てくれた感謝の気持ちからです」といった一言が、他の相続人の納得感を引き出し、円満な相続を実現する上で絶大な効果を発揮します。家族への感謝の気持ちや想いをぜひ書き記してください。

まとめ
「遺言」には、一般的な最後のメッセージである「ゆいごん」と、法的な効力を持つ「いごん」という二つの側面があります。大切なのは、ご自身の想いを確実に実現するために、民法のルールに則った法的に有効な「遺言書(いごんしょ)」を作成することです。
遺言書は、残されるご家族への最後の、そして最大の思いやりです。ご自身の想いを法的に確実な形で残すため、まずはお気軽に私たちのような専門家にご相談ください。最適な方法を一緒に考え、その第一歩をサポートいたします。


