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なぜ遺言がないと揉めるのか?相続争い回避の対策と公正証書遺言のすすめ

「相続でもめるのは、財産が多い家庭だけ」
そう思っていませんか。
実は、相続争いの多くは、特別に裕福な家庭ではなく、ごく一般的なご家庭で起きています。
原因の多くは、生前に遺言書を残していなかったこと。
たった一つの「準備不足」が、残された家族の関係を大きく変えてしまうのです。
相続は、お金の問題であると同時に、感情の問題でもあります。
「公平とは何か」「誰がどれだけ親に尽くしたのか」——
こうした想いが交錯したとき、故人の意思が示されていなければ、家族は迷い、対立し、立ち止まってしまいます。
では、なぜ遺言がないと相続争いが起きやすいのでしょうか。
そして、遺言書にはどれほどの力があるのでしょうか。
この記事では、相続争いが生じる仕組みと、遺言書が果たす本当の役割、さらに家族の絆を守るために押さえておくべき具体的なポイントを、専門家の視点からわかりやすく解説します。
なぜ遺言がないと相続争いが起きやすいのか?
遺言書がない場合、法律に基づいて相続人全員で「遺産分割協議」を開き、誰がどの財産をどれだけ相続するのかを話し合って決めなければなりません。
この協議の最大の問題点は、相続人「全員の合意」が必要であるという点です。一人でも内容に納得しない人がいれば、協議はまとまらず、預貯金の解約や不動産の名義変更といった手続きが一切進まなくなってしまいます。この「全員の合意」という高いハードルが、争いの火種となるのです。
具体的に、遺産分割協議で揉めやすいケースには以下のようなものがあります。
- 不動産など分けにくい財産しかない場合
自宅など簡単に分割できない財産しかないと、「誰が取得するのか」「売却して現金で分けるのか」で意見が対立しやすくなります。 - 各相続人が考える「平等」の認識が異なる場合
「平等」の定義は人それぞれです。「均等に分けるべきだ」という人もいれば、「親の面倒を多く見たから多くもらうべきだ」と考える人もいます。 - 長年の貢献度や生前の援助を巡る不満が噴出する場合
親の介護を長年担ってきたことへの貢献(寄与分)や、特定の子供だけが住宅資金などの援助を受けていたこと(特別受益)に対し、「不公平だ」という感情的な対立が生まれやすくなります。
これらの例が示すように、「全員の合意」という要件は、家族に金銭的な問題だけでなく、公平さ、犠牲、そして過去の些細な不満といった、極めて個人的な感情の歴史と向き合うことを強います。しかも、そこに故人の導く声はありません。これこそが、争いが育つ土壌なのです。
遺言書がもたらす効果とは
遺言書を作成しておくことの最大の効果は、原則として、相続人同士の話し合いである「遺産分割協議」が不要になることです。
遺言書があれば、その内容に従って財産が分けられるため、相続人が一堂に会して合意形成をする必要がなくなります。これにより、相続人は精神的な負担や時間的な制約から解放され、感情的な対立を避けながら、円滑に手続きを進めることができるのです。これは、残された家族にとって非常に大きなメリットと言えるでしょう。
特に遺言書を作成した方がよいケース
全ての方に遺言書の作成をお勧めしますが、特に以下のような状況にある方は、ご家族のために作成しておく必要性が高いと言えます。
- お子さんがいないご夫婦
- 配偶者が全財産を相続できるとは限りません。亡くなった方の親や兄弟姉妹も相続人になる可能性があり、配偶者が遺産分割協議で話し合わなければならない事態を避けるために遺言書が有効です。
- 複数回の結婚歴があり、それぞれのお相手との間にお子さんがいる方
- 現在の配偶者との子と、以前の配偶者との子が共に相続人となります。普段付き合いのない者同士が話し合うことになるため、争いを防ぐために遺言書で分配方法を指定しておくことが重要です。
- 事実婚のパートナーがいる方
- 法律上の婚姻関係にないパートナーには、相続権がありません。財産を残したい場合は、遺言書を作成することが必須です。
- 再婚相手に連れ子がいる方
- 連れ子には、そのままでは相続権がありません。養子縁組をしていない連れ子に財産を残したい場合は、遺言書が必要です。
- おひとりさま(独身の方)
- 相続人がいない場合、財産は最終的に国庫に帰属します。お世話になった方や、特定の団体への寄付などを考えている場合は、遺言書でその意思を明確にする必要があります。
- 会社や事業を経営しており、後継者に引き継がせたい方
- 自社の株式などが複数の相続人に分散してしまうと、経営に支障をきたす恐れがあります。事業を円滑に承継させるため、後継者を指定する遺言書が不可欠です。
相続争いを防ぐための遺言書には2つの選択肢
相続争いを防ぐために有効な遺言書には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
手軽に作成できる「自筆証書遺言」
自筆証書遺言とは、遺言者本人が、遺言の全文、日付、氏名をすべて手書きし、押印して作成する遺言書です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 手軽で費用がかからない | 形式不備で無効になるリスクが高い(日付や押印漏れなど) |
| いつでも作成できる | 紛失・偽造・隠匿のリスクがある |
| 内容を秘密にできる | 死後、家庭裁判所の「検認」手続きが必要 |
最も確実で安心な「公正証書遺言」
公正証書遺言とは、公証役場で、法律の専門家である公証人と証人2名以上の立ち会いのもと作成される、法的に極めて信頼性の高い遺言書です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 形式不備で無効になる心配がほぼない | 作成に費用と手間がかかる |
| 原本が公証役場で保管され、安全 | 証人2名が必要で、内容を知られる |
| 死後の「検認」手続きが不要で、相続人の負担が少ない | 修正する際も同様の手続きが必要 |
相続争いを確実に防ぐという観点からは、専門家が関与し、形式不備で無効になるリスクがほとんどなく、死後の手続きもスムーズな「公正証書遺言」が最もお勧めできる方法です。
家族の絆を守る、遺言書作成6つの心配り
どの種類の遺言書を選ぶかも重要ですが、それ以上に「何を書くか」が相続争いを防ぐための鍵となります。以下の6つの心配りを押さえて、万全な遺言書を作成しましょう。
1. 全ての財産について具体的に記載する
誰にどの財産を渡すのかを明確に特定するため、預貯金は「〇〇銀行〇〇支店の普通預金」、不動産は登記簿謄本通りに「所在・地番」などを正確に記載します。全てを網羅するために、準備段階で詳細な「財産目録」を作成することは非常に価値ある手段です。それは遺言書作成のプロセスを簡潔にするだけでなく、残されたご家族にとって明確な道しるべとなります。 もし遺産の一部しか記載がない場合、記載のない財産については結局、遺産分割協議が必要になってしまいます。記載漏れを防ぐために、最後に「その他一切の財産は〇〇に相続させる」という一文を入れておくと安心です。
2. 相続人には「相続させる」と書く
相続人に財産を渡す場合、「遺贈する」ではなく「相続させる」と記載することが重要です。「相続させる」と書くことで、その財産を受け取る相続人が単独で不動産の名義変更や預貯金の解約手続きを行えるようになります。他の相続人の協力(実印や印鑑証明書など)が不要になるため、手続きが格段にスムーズになります。
3. 遺留分への配慮を忘れない
兄弟姉妹を除く法定相続人には、法律で保障された最低限の取り分である「遺留分」という権利があります。特定の相続人に全財産を渡すなど、遺留分を侵害する内容の遺言書は、法的には有効ですが、後に他の相続人から「遺留分侵害額請求」という金銭の支払いを求める請求をされ、新たな争いの原因となる可能性があります。遺留分という考え方を尊重することは、単なる法的な手続きではありません。それは、すべての相続人に対する思いやりの表明です。これを無視した遺言書は、法的な争いを招き、あなたが最も望まなかった家族の平和を損なうことになりかねません。
4. 万が一に備える「予備的遺言」
「長男Aに自宅を相続させる。もし長男Aが私より先に死亡した場合は、その自宅は孫のBに相続させる」というように、財産を渡す相手が自分より先に亡くなった場合の次の受取人を指定しておくのが「予備的遺言」です。 これがないと、先に亡くなった相続人の分の財産は、遺言の指定がない状態に戻ってしまい、その財産を巡って遺産分割協議が必要になるリスクがあります。
5. 手続きを円滑にする「遺言執行者」の指定
遺言の内容を実現するための具体的な手続き(預貯金の解約、不動産の名義変更など)を行う責任者が「遺言執行者」です。あらかじめ遺言書で指定しておくことで、相続手続きが非常にスムーズに進みます。遺言執行者がいれば、相続人は煩雑な手続きから解放され、負担が大幅に軽減されます。
6. 想いを伝える「付言事項」を活用する
遺言書の中で、法的な効力以上に大きな力を持つのが、最後に添えるメッセージ「付言事項」です。これは単なる追伸ではありません。遺言書の「心」そのものであり、あなたが愛する家族へ贈る、理解という最後の贈り物です。 なぜこのような財産の分け方にしたのか、その理由や想い、一人ひとりへの感謝の気持ちを、あなた自身の言葉で綴ってください。法的な拘束力はなくとも、このメッセージは、傷ついた感情を癒し、感情的な対立を防ぐ力を持っています。ある専門家が言うように、この想いのこもった言葉が、あなたが最も大切にしてきた家族の絆を守るための、極めて重要な要素となるのです。
遺言書だけではない、最も大切な相続争い対策
専門家が口を揃えて「一番大事」と語る、究極の相続争い対策があります。それは、遺言書の作成以上に、生前から家族が集まる機会を増やし、良好なコミュニケーションを保っておくことです。
遺言書が争いを防ぐための強力な「道具」であるならば、日頃のコミュニケーションは、その道具が効果を発揮するための「土台」です。相続の話でなくても構いません。直接顔を合わせて言葉を交わすことで、お互いの近況や考えを理解し、思いやりの気持ちが育まれます。こうした日頃からの対話の積み重ねこそが、いざという時に感情的な対立が生まれるのを防ぐ、何よりの防波堤となるのです。
まとめ:想いを繋ぐための準備を始めましょう
結局のところ、心を込めて準備された遺言書は、一つの「愛の形」です。確実性の高い「公正証書遺言」を選び、疑いの余地を残さないよう6つの心配りを反映させ、そして何よりも日頃のコミュニケーションを通じてご家族との絆を育むことで、あなたは家族に「平和」という最高の贈り物を遺すことができます。
大切な家族へ負担をかけず、ご自身の想いを円満に繋いでいくために、ぜひ元気なうちから準備を始めてみてください。そうすることで、あなたの人生のレガシーは、困難ではなく、調和として受け継がれていくでしょう。もし不安な点や不明な点があれば、専門家に相談することも一つの有効な選択肢です。


