相続不動産の漏れを防ぐ「名寄帳(なよせちょう)」の取得方法と基礎知識

長谷川 亮又
行政書士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター・不動産会社代表
1969年生まれ、AB型。学生時代に宅地建物取引士を取得。事業用不動産仲介を経て、家業にて地域密着型の実務を経験。平成17年に空間計画エステート有限会社を設立し、不動産仲介から管理まで一貫したサービスを提供。令和5年に行政書士登録。「不動産×法務」の両面から、専門性の高いトータルサポートを実践しています。

相続手続きを進めるうえで、最も重要な作業の一つが「相続財産の調査」です。特に不動産については、被相続人がどこにどのような物件を所有していたのかを正確に把握しなければ、遺産分割協議や相続登記を進めることができません。しかし、すべての不動産を相続人が把握しているとは限らず、思いがけない土地や建物が後から見つかるケースも少なくありません。

こうした不動産調査の際に非常に役立つ資料が「名寄帳(なよせちょう)」です。名寄帳は、市区町村が管理する「所有者ごとの不動産一覧表」であり、特定の人物がその自治体内に所有している不動産を一度に確認できる重要な資料です。固定資産税の課税明細書を紛失している場合や、被相続人が複数の不動産を所有していた可能性がある場合には、相続財産の全体像を把握するうえで欠かせない存在となります。

この記事では、名寄帳とはどのような書類なのかという基本から、相続時に取得すべきケース、取得方法、必要書類、そして実務上の注意点までを分かりやすく解説します。さらに、2026年から始まる新制度「所有不動産記録証明制度」についても触れながら、相続における不動産調査のポイントを整理していきます。

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目次

名寄帳とは

名寄帳とは、市区町村が作成・管理している「所有者別不動産一覧表」のことです。特定の個人がその自治体内に所有している不動産の情報を一箇所にまとめた帳簿であり、相続財産を調査する際の「第一歩」として極めて重要な役割を果たします。

名寄帳には、主に以下の内容が簡潔にまとめられています。

  • 所在地(地番や家屋番号)
  • 地目・構造(土地の用途や建物の種類)
  • 面積(地積や床面積)
  • 固定資産税評価額(税金計算の基準となる価格)

実務上の大きな特徴は、登記簿謄本が不動産を主体とした「物件単位」の記録であるのに対し、名寄帳は「人(所有者)」を主体とした人単位の記録である点です。このため、物件の正確な所在が不明であっても、被相続人の氏名からその自治体内の所有物件を一斉に検索・特定できるという利点があります。

相続時に名寄帳を取得すべきケース

すべての相続において名寄帳が必須となるわけではありませんが、以下のシチュエーションでは、財産調査の精度を高めるために取得を強く推奨します。

固定資産税の課税明細書を紛失した場合

毎年4月から6月頃、不動産の所有者宛てに市区町村から「固定資産税の納税通知書」が届きます。これに同封されている「課税明細書」があれば、所有物件の概要を確認できます。しかし、これらを紛失してしまった場合や、被相続人と別居しており書類の保管場所が分からない場合、名寄帳がその代替手段となります。

複数の不動産を所有していた可能性がある場合

被相続人が自宅以外にも土地や建物を所有していた可能性がある場合、相続人がそのすべてを正確に把握しているとは限りません。名寄帳を取得することで、その自治体内に眠っている被相続人名義の不動産を一覧で掘り起こすことが可能になります。

名寄帳の取得方法(場所・費用・請求できる人)

名寄帳は個人の資産状況に関わる機密性の高い書類であるため、申請先や請求権者が厳格に定められています。

申請先

不動産の所在地を管轄する市区町村役場の窓口(資産税課や税務課など)です。なお、**東京23区内や大阪市内の物件については、各区の「都税事務所」・「市税事務所」が窓口となる点に注意してください。

請求者

プライバシー保護のため、以下の者に限定されます。

  • 所有者本人
  • 法定相続人
  • 受遺者(遺言により財産を譲り受ける人)
  • 遺言執行者
  • 上記の方から委任を受けた代理人(親族、行政書士など)

手数料

自治体により異なりますが、概ね1通200円〜400円程度です。

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申請に必要となる書類

窓口で申請を行う際は、以下の書類を準備する必要があります。不備があると二度手間になるため、事前にチェックリストとして活用してください。

  • 名寄帳の交付申請書(窓口に備え付けられています)
  • 申請者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 被相続人の死亡が確認できる書類(除籍謄本など)・相続手続に使用する場合
  • 申請者が相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)・相続手続に使用する場合
  • 委任状(代理人が申請する場合のみ必要)

名寄帳を利用する際の注意点

実務上の見落としを防ぎ、後のトラブルを回避するために、以下の2点を必ず押さえておきましょう。

市区町村ごとに取得が必要

名寄帳は自治体(市区町村)単位で管理されています。例えば、A市とB市の両方に不動産がある場合、A市の役所で取得した名寄帳にはB市の物件は一切記載されません。被相続人が複数の自治体に不動産を持っていた可能性がある場合は、それぞれの役所へ個別に請求する必要があります。

個人名義のみが対象

名寄帳に記載されるのは、あくまで被相続人「個人」の名義の不動産です。被相続人が一人で経営していた会社の「法人名義」の不動産は、個人の名寄帳には載りません。たとえ被相続人が唯一の株主で代表者であったとしても、法人名義の財産は別途、法人名義で申請して調査を行う必要があります。

これらの確認を怠り、遺産分割後に新たな財産が見つかった場合、「遺産分割協議のやり直し」という極めて重い法的負担が生じるリスクがあります。

補足:2026年から始まる「所有不動産記録証明制度」

現在の名寄帳は自治体ごとに取得が必要ですが、2026年(令和8年)2月2日から「所有不動産記録証明制度」という新制度が施行されています。

これは法務局において、特定の個人が全国に所有している不動産を一度にリスト化できる仕組みです。いわば「全国版の名寄帳」とも言える画期的な制度です。相続人が全国の法務局を通じて、自治体の枠を超えた網羅的な相続不動産調査を一度で行えるようになります。

まとめ:相続不動産の調査は、専門家のサポートで「確実」かつ「円滑」に

ここまで解説した通り、名寄帳の取得や、それを基にした財産調査は、相続手続きの最初の関門です。しかし、実際に進めてみると「複数の自治体にまたがる調査」「法人名義との切り分け」「法務局の新制度(所有不動産記録証明制度)との併用」など、個人で行うには複雑で、手間のかかる場面が多く存在します。

もし、一つでも漏れがあれば、せっかく作成した遺産分割協議書が無効となり、相続人全員でやり直し……という最悪の事態を招きかねません。

遺産分割協議・財産目録作成の「プロ」にご相談ください

私たち行政書士は、名寄帳の代理取得から、法的な効力を持つ「財産目録」の作成、そして不動産調査の結果を反映した「遺産分割協議書」の作成まで、相続手続きをトータルでサポートする専門家です。

  • 「忙しくて役所を回る時間がない」
  • 「名寄帳の見方が難しく、本当に漏れがないか不安」
  • 「トラブルのないスムーズな遺産分割協議書を作りたい」

このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、当事務所へご相談ください。

正確な財産調査に基づいた、争いのない遺産分割を支援いたします。まずは、今の状況をお聞かせいただくことから始めませんか。お気軽にお問い合わせください。

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