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親が「連帯保証人」だと知らなかった!相続したらどうなる?対処法を解説

ある日突然、見知らぬ金融機関から督促状が届く。「亡くなったお父様が、〇〇様の借入金の連帯保証人でしたので、代わりに返済をお願いします。」――こんな事態に陥ったら、誰しもパニックになってしまうでしょう。
親が亡くなり、遺産を相続した数ヶ月後、あるいは数年後に、実は親が誰かの「連帯保証人」だったという事実が発覚するケースは少なくありません。これは、決して他人事ではない、深刻な問題です。
この記事を読めば、亡くなった親が連帯保証人だった場合に何が起こるのか、そしてあなたが取るべき具体的な行動が明確にわかります。予期せぬ負債を抱え込まないために、すぐに行動することが何よりも重要です。
連帯保証人の地位は相続される、が原則
まず理解すべき最も重要な点は、「連帯保証人」という法的な地位も、借金と同様に相続の対象になるということです。
なぜ連帯保証人の地位も相続するのか?
相続と聞くと、預貯金や不動産といった「プラスの財産」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、法律上の相続はそれだけではありません。
民法第896条は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定めています。
これは、亡くなった方(被相続人)が持っていたすべての権利(プラスの財産)と義務(マイナスの財産)を、相続人が丸ごと引き継ぐことを意味します。そのため、借金や未払金はもちろんのこと、「他人の債務を保証する」という連帯保証人の地位(義務)も、相続人に引き継がれるのが大原則なのです。例えば、知人の事業資金の借入、親族がアパートを借りる際の賃貸借契約などが典型例です。
知らないうちに相続してしまうケースが多い理由
この問題が「知らなかった」という形で発覚しやすいのには、明確な理由があります。
- ポイント1:契約書の不在 連帯保証契約を結ぶ際、保証人は契約書のコピーをもらわないケースが多くあります。親が家族にその事実を伝えていない限り、相続人が契約の存在を知ることは極めて困難です。
- ポイント2:問題の潜在化 本来の債務者(主債務者)がきちんと返済を続けている限り、保証人に請求が来ることはありません。問題が表面化しないため、親自身も保証人であることを忘れ、家族も気づかないまま時間が経過してしまうのです。
【まず確認】親が連帯保証人だったか調べるには?
突然の請求で慌てる前に、あるいは不安を感じた時点で、まずは故人が連帯保証人になっていなかったかを調査することが重要です。主な調査方法は以下の通りです。
- 信用情報機関への情報開示請求 相続人であれば、故人の信用情報を請求できます。これにより、金融機関からの借入に関する保証契約が判明する場合があります。主要な信用情報機関は「CIC」「JICC」「全国銀行個人信用情報センター(全銀協)」の3つです。
- 契約書類の捜索 故人の自宅や事務所などを探し、「金銭消費貸借契約書」や「賃貸借契約書」といった書類がないか確認します。保証契約はこれらの契約書の中に記載されています。
- PC・スマートフォンの確認 メールのやり取りや、契約書のPDFファイルなど、保証契約に関するデジタル記録が残っている可能性もあります。
- 預貯金口座の取引履歴の確認 見慣れない個人や会社への定期的な送金履歴などがないか確認します。これが保証契約履行のヒントになることもあります。
相続した場合、誰がどれだけ負担するのか?
もし連帯保証人の地位を相続した場合、その債務は各相続人が法定相続分に応じて分割して負担することになります。
例えば、被相続人に1,600万円の連帯保証債務があり、相続人が母と子供2人だった場合、それぞれの負担額は以下のようになります。
- 母: 800万円 (相続分 1/2)
- 子供A: 400万円 (相続分 1/4)
- 子供B: 400万円 (相続分 1/4)
ここで非常に重要な注意点があります。たとえ遺産分割協議で「すべての債務は母が引き継ぐ」と相続人間で取り決めたとしても、それはあくまで相続人間の内輪の取り決めでしかないのです。債権者(お金を貸した側)に対して、その取り決めを主張することはできず、債権者は各相続人に法定相続分どおりの請求をすることが可能なんです。
これは非常に重要な点で、安易に「特定の相続人が全債務を引き継ぐ」という遺産分割協議書を作成しても、法的には他の相続人の返済義務は消えません。この点を誤解していると、後々、債権者からの突然の請求に対応できなくなります。
では、この予期せぬ債務を回避する方法はあるのでしょうか。最も重要な選択肢が「相続放棄」です。
連帯保証債務を回避するための最重要手続き「相続放棄」
相続放棄とは?
相続放棄とは、家庭裁判所で行う法的な手続きです。これにより、預貯金や不動産といったプラスの財産も、借金や連帯保証人の地位といったマイナスの財産も、すべてを一切引き継がないと意思表示することができます。
相続放棄が認められれば、あなたは法的に「初めから相続人ではなかった」とみなされるため、連帯保証人の地位を承継せずに済みます。

厳格な期限:原則「3ヶ月以内」
相続放棄には、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」という非常に厳格な期限(熟慮期間)が定められています。この期間内に、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述(申し立て)をしなければなりません。
【重要】期限を過ぎてから発覚した場合の例外措置
「3ヶ月なんてとっくに過ぎている…」と諦めるのはまだ早いです。期限後に連帯保証人であった事実が発覚した場合でも、例外的に相続放棄が認められる可能性があります。
- 例外が認められる条件 相続財産(特に債務)は全くないと信じており、そのように信じたことに「相当の理由がある」と家庭裁判所に認められた場合です。「親から借金の話は一切聞いていなかった」「督促状が届くまで知る由もなかった」といった事情がこれにあたります。
- 新たな期限 上記の条件を満たす場合、債務の存在を知った時(例:債権者からの督促状が届いた日)から3ヶ月以内であれば、相続放棄の申述が受理される可能性があります。
ただし、この例外措置を利用した場合でも、後から債権者に「その相続放棄は期間を過ぎており無効だ」として訴訟を起こされ、最終的に放棄が無効と判断されてしまうリスクも残ります。また、たとえ放棄が認められた場合でも、一度相続した後何年も経ってからの放棄では、既に相続した財産を処分・消費してしまっている場合など、面倒な問題がいくつも出てくる可能性があります。
相続放棄以外にも、状況によっては検討すべき選択肢があります。
その他の選択肢と、すでに相続してしまった場合の対処法
相続財産が不明な場合に有効な「限定承認」
限定承認とは、「相続したプラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産を弁済する」という制度です。例えば、プラスの財産が500万円、連帯保証債務が1,000万円あっても、返済義務は500万円までとなり、自身の財産から持ち出す必要がなくなります。
ただし、手続きが非常に複雑で、相続人全員の同意が必要となるため、実際に利用されるケースは多くありません。検討する場合は、司法書士や弁護士といった専門家への相談が不可欠です。
すでに相続してしまった場合の4つの対処法
相続放棄の機会を逃し、連帯保証人としての地位を相続してしまった場合の具体的な対処法は、以下の4つです。
- 全額を返済し、主債務者に請求する(求償権の行使) あなたが肩代わりした分を、本来の債務者(主債務者)に請求する権利を「求償権」といいます。返済を実行する前に、内容証明郵便などで主債務者に「これからあなたの代わりに返済します」と通知しておくことが、後のトラブルを防ぐ上で重要です。
- 債権者(金融機関など)と減額交渉を行う 自身の経済状況を正直に説明し、分割払いや利息のカット、元本の一部の減額などを交渉する方法です。個人での交渉は難しいため、弁護士などの専門家に代理を依頼することが有効です。
- 債務整理を検討する(任意整理・個人再生) 返済が著しく困難な場合、法的な手続きを通じて返済の負担を軽減する方法です。「任意整理」は債権者と交渉して返済計画を見直す方法、「個人再生」は裁判所を通じて債務を大幅に圧縮する方法です。
- 最終手段としての自己破産 返済の目途が全く立たない場合の最終的な選択肢です。裁判所に申し立て、支払い義務を免除してもらう制度ですが、自身の財産の多くを手放すことになります。
そもそも、すべての保証が相続されるわけではありません。最後に、注意すべき保証の種類について確認しましょう。
注意:相続されない保証契約もある
すべての保証契約が相続の対象になるわけではありません。代表的な例として、以下の2つが挙げられます。
| 保証の種類 | 相続の対象になるか | 理由 |
| 身元保証 | 対象外 | 本人と保証人の個人的な信頼関係に基づく契約のため、相続人には引き継がれません。ただし、被相続人の生前に損害が発生していた場合は、その賠償義務は相続されます。 |
| 限度額の定めのない根保証 | 対象外 | 保証人の負担が過度に大きくなるため、特段の事情がない限り相続されません(最高裁判例)。なお、2020年4月の民法改正により、現在では極度額の定めのない個人の根保証契約は無効とされています。 |
まとめ:問題が発覚したら、すぐに専門家へ相談を
この記事の要点を3つのポイントにまとめます。
- 原則として、親の連帯保証人の地位は「知らなかった」としても相続してしまいます。
- 最も有効な回避策は「相続放棄」です。原則3ヶ月の期限がありますが、知らなかったことに正当な理由があれば、期限後でも認められる可能性があります。
- 問題が発覚したら、一人で悩まず、できる限り速やかに専門家に相談することが、被害を最小限に抑える鍵です。
突然の負債に直面すると、冷静な判断が難しくなります。迅速かつ適切な対応を取るためにも、まずは専門家の助言を求めることから始めてください。


