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他の相続人が「財産目録を見せない」ときは?自分でできる調査法について

相続が発生したものの、亡くなった親と同居していた兄弟など、遺産を管理している他の相続人が預金通帳や財産の一覧(財産目録)を見せてくれず、遺産の全体像がわからずに困っている、というお話をよくお聞きします。
まず知っておくべき重要な事実として、原則として、相続人の一人が他の相続人に対して、全財産を開示する法的な義務は存在しません。このため、相手が協力してくれない場合、感情的になったりしても状況は改善しにくいのが現実です。
遺産の全体像を正確に把握するためには、あなた自身で財産を調査する必要があります。この記事では、ご自身で遺産を調べるための具体的な方法を、段階を追ってわかりやすく解説します。
相続人が財産を開示しないのはなぜか
他の相続人が財産の開示に協力的でない背景には、いくつかの典型的な理由が考えられます。状況を客観的に理解するために、主な理由を知っておきましょう。
- 財産の使い込みを隠したい
被相続人が亡くなる前に、その財産を自分の家の購入資金や子供の学費などに使ってしまった事実を隠したいと考えているケースです。取引履歴を見せると、不自然な出金が発覚してしまうため、開示を拒否することがあります。 - より多くの遺産を得たい
遺産の総額を他の相続人に正確に知らせないことで、自分に有利な条件で遺産分割を進めようと意図しているケースです。 - 介護などへの貢献を主張したい
長年にわたり被相続人の介護などを一身に担ってきた相続人が、「自分は他の相続人よりも多くの財産をもらう権利がある」と考えているケースです。その思いから、財産の詳細を一方的に開示することに抵抗を感じている場合があります。
これらの理由は、いずれも遺産分割が難航する原因となり得ますが、まずは冷静に事実確認を進めることが重要です。
自分でできる相続財産の調査方法
相続人であれば、被相続人の財産について、各機関に問い合わせて情報を得る権利があります。ここでは、資産の種類ごとに具体的な調査方法を解説します。
預貯金の調べ方
相続人であれば、被相続人名義の預金口座について、金融機関に直接照会する権利があります。
手続きには、主に以下の書類が必要です。
※金融機関によって、追加で別途必要な書類がございます。必ず事前に金融機関にご確認願います。
- 被相続人の戸籍謄本(死亡の事実が記載されたもの)
- ご自身の戸籍謄本(自身が相続人であることを証明するもの)
- ご自身の身分証明書(運転免許証など)と印鑑
金融機関の窓口で手続きをすると、「相続開始日(死亡日)の残高証明書」と「取引履歴(取引明細)」を取得できます。取引履歴は、一般的に過去10年程度まで遡って取得することが可能ですが、金融機関によってはそれ以前の履歴も保管している場合があります。ただし、長期の履歴開示は難しくなってきている傾向にあります。これにより、亡くなった時点での正確な残高と、生前の不自然な出金がないかを確認できます。
取引のあった金融機関がわからない場合は、まず被相続人の自宅に残された郵便物や、金融機関名が入ったカレンダー、粗品のボールペンなどを探してみましょう。それでも不明な場合は、心当たりのある金融機関に「全店照会」を依頼することで、その金融機関の全支店に口座がないか調べることができます。
不動産の調べ方
不動産の調査は、市区町村役場から始めます。
まず、被相続人が不動産を所有していた可能性のある市区町村の役所で、「名寄帳(なよせちょう)」または「固定資産課税台帳」の写しを取得します。これにより、その市区町村内で被相続人が所有(納税)している不動産の一覧を確認できます。故人の固定資産税の納税通知書が手元にあれば、それが大きな手がかりになります。
次に、名寄帳などで不動産の所在地番や家屋番号を特定したら、その不動産を管轄する法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得します。これにより、所有者の氏名や住所、不動産の権利関係などの詳細な情報を確認することができます。
有価証券(株式・投資信託など)の調べ方
被相続人がどの証券会社を利用していたか不明な場合は、「株式会社証券保管振替機構(通称:ほふり)」への開示請求が有効な手段です。
相続人として所定の手続きで開示請求を行うと、被相続人が口座を開設していた証券会社や信託銀行などの一覧が記載された書類を受け取ることができます。
ただし、注意点があります。「ほふり」でわかるのは、あくまで口座を開設していた証券会社の名称までです。その口座に具体的にどのような銘柄がどれだけあったかという残高の詳細については、開示された各証券会社に対して、個別に問い合わせて確認する必要があります。
その他の財産の調べ方
- 生命保険
保険証券や保険会社からの郵便物を探すのが第一です。見つからない場合は、預貯金の取引履歴を確認し、保険料の引き落としがないかを探すことで、契約していた保険会社を特定できる場合があります。 - デジタル資産やその他の手がかり
ネット銀行や暗号資産などのデジタル資産は、手がかりが少なく調査が難しい傾向にあります。特に、海外のウォレットに保管され、暗号キーが不明な暗号資産などは、追跡がほぼ不可能です。しかし、日本の登録業者(暗号資産交換業者)を通じて取引されていたものであれば、業者に問い合わせることで存在が判明する可能性はあります。また、もし被相続人が生前に確定申告をしていた場合、その申告書の控えが重要な手がかりになることがあります。不動産収入や配当収入などの記載があれば、そこから未把握の不動産や有価証券の存在が判明する可能性があります。
自分で調べても限界がある場合の次の手段
自力での調査が難航したり、他の相続人が全く話し合いに応じなかったりする場合には、次のような公的な手続きを利用することを検討します。
家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる
当事者間の話し合いで解決しない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。調停では、裁判官と民間の有識者からなる調停委員が中立的な立場で間に入り、冷静な話し合いが進むようサポートしてくれます。
裁判所が直接財産を調査してくれるわけではありませんが、調停の場で調停委員から相手方に対して財産の開示を促してもらうことができ、任意の開示につながる効果が期待できます。
例外:遺言執行者がいる場合
被相続人が遺言書で「遺言執行者」を指定していた場合は、状況が大きく異なります。
民法第1011条により、遺言執行者は就任後、遅滞なく相続財産の目録を作成し、それを相続人に交付する法的な義務を負っています。これは、他の相続人が財産を開示する義務がないのとは全く違う、法律で定められた明確な義務です。
もし遺言執行者がこの義務を怠り、財産目録の開示を拒否するようであれば、相続人は法律に基づいてその交付を強く請求することができます。
専門家への相談も有効な選択肢
相続財産の調査やその後の交渉、手続きをご自身で行うことに負担や不安を感じる場合は、専門家に依頼するのも有効な選択肢です。
弁護士や司法書士、といった専門家は、相続人の代理人として、これまで説明したような財産調査を行うことができます。特に弁護士は、「弁護士会照会制度(23条照会)」という強力な調査権限を持っており、この制度を利用して金融機関や行政機関などから情報を得られる場合があります。
専門家に依頼することで、時間的・精神的な負担が大幅に軽減されるだけでなく、法的な知識に基づいて正確な財産調査が期待できます。
まとめ
他の相続人が財産目録や通帳を見せてくれなくても、決して打つ手がないわけではありません。感情的にならず、ご自身の権利としてできることを一つずつ進めていくことが大切です。
この記事で解説したように、まずは自分で預貯金や不動産などの調査を行い、それでも解決が難しい場合は、家庭裁判所の調停手続きを利用したり、専門家に相談したりといった選択肢があります。
相続問題は、手続きの複雑さに加え、親族間の対立による精神的な負担も大きいものです。一人で抱え込まず、必要であれば専門家の力を借りることも視野に入れながら、ご自身の正当な権利を守るために行動してください。


