相続手続きをするための具体的な流れ一覧

相続は、ある日突然発生するものです。
しかし、実際に相続が発生した後は、やるべき手続きがたくさんあります。
しかも、それぞれの手続きには期限が定められているものも多いため、慌てずに順序立てて行動することが大切です。

ここでは、相続手続きの全体的な流れをわかりやすく説明します。
まずは、全体の流れと各手続きの期限の目安を表にまとめましたのでご覧ください。

目次

相続手続きの大まかな流れ

手続きの内容期限の目安
死亡届の提出死亡から7日以内
遺言書の有無の確認できるだけ早く
相続人の確定できるだけ早く
相続財産の調査・確認できるだけ早く〜3ヶ月以内
相続放棄の申立死亡を知った日から3ヶ月以内
遺産分割協議期限はない(早めが理想)
相続税の申告と納付死亡を知った日から10ヶ月以内
不動産などの名義変更できるだけ早く
相続税申告・納付(10ヶ月以内)

このように、相続手続きは順番に進めていくことが基本ですが、特に期限がある手続きは注意が必要です。
では、それぞれの手続きをもう少し詳しく説明していきます。

遺言書の確認(できるだけ早く)

相続手続きにおいて、最初に行うべき重要なポイントが「遺言書の有無の確認」です。
遺言書があるかどうかによって、遺産分割の方法や相続人の権利が大きく変わります。
特に遺言書が存在する場合、基本的にはその内容が優先されるため、遺産分割協議を行う前に必ず確認が必要です。

遺言書には主に次の3つの種類があります。

  1. 自筆証書遺言(本人が手書きで作成)
  2. 公正証書遺言(公証役場で作成・保管)
  3. 秘密証書遺言

この中でも実際によく使われているのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
次に、それぞれの遺言書をどのように探せば良いのかを詳しく説明します。

遺言の探し方

遺言書があるかどうかを確認する方法は次のようなものがあります。

自宅や身近な場所を探す
  • 書斎や机の引き出し
  • 金庫
  • 仏壇や神棚
  • ファイルや封筒に「遺言書」と書かれたもの
自筆証書遺言書保管制度(法務局)の確認
  • 2020年7月以降は法務局に預けられているケースあり
  • 法務局に申請して検索・証明書の取得が可能
公正証書遺言の検索
  • 全国どこの公証役場でも検索可能
  • 公証役場の遺言検索システムを利用

自筆証書遺言の調べ方

自筆証書遺言とは、故人が自分で手書きした遺言書のことです。
以前は自宅などに保管されていることがほとんどでしたが、2020年7月からは「自筆証書遺言書保管制度」がスタートし、法務局に預けているケースも増えています。
ここでは、その両方の調べ方を説明します。

自宅や手元に保管されている場合

一般的に自宅に保管されていることが多いので、次のような場所を重点的に探すと良いでしょう。

  • 書斎や机の引き出し
  • 仏壇や神棚
  • 金庫
  • ファイルや封筒に「遺言書」と記載されたもの

保管されていた場合は、法務局から保管事実証明書の交付を受け、遺言書情報証明書の取得が可能です。
この制度を利用した遺言書は、検認手続きが不要で、そのまま相続手続きを進めることができるのが大きな特徴です。
自宅で見つからなかった場合でも、あきらめずに法務局への確認を行うことが重要です。

また、もし自筆証書遺言が見つかった場合、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。
検認とは、遺言書の内容を確認し、改ざんや偽造がないかをチェックする手続きです。
検認が済まないと、不動産の名義変更などができないので注意が必要です。

自筆証書遺言書保管制度を利用している場合

被相続人が自筆証書遺言書保管制度を利用し遺言書を法務局に預けているかどうかを調べる方法もあります。
法務局に遺言書保管事実証明書交付請求手続きを行うことで確認できます。

遺言書保管事実証明書交付請求手続き:必要なもの
  • 交付請求書
  • 故人の死亡を証明する書類(除籍謄本等)
  • 請求者の住民票の写し
  • 請求者が相続人の場合、戸籍謄本

公正証書遺言の調べ方

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成し、原本が保管されている遺言書です。
自宅に控えや写しが残されていない場合でも、公証役場の「遺言検索システム」で確認することができます。

公正証書遺言:検索に必要なもの
  • 故人の死亡を証明する書類(除籍謄本)
  • 相続人であることがわかる書類(戸籍謄本など)
  • 検索する人の本人確認書類

検索が完了すれば、公正証書遺言が存在する場合は、その内容を確認することができます。
公正証書遺言は、家庭裁判所での検認が不要で、そのまま相続手続きを進められる点が特徴です。

相続人・財産の調査

相続手続きでは、誰が相続人になるのかを正確に確認することがとても大切です。相続人とは、亡くなった方(被相続人)の財産や権利・義務を法律上引き継ぐことができる人を指します。相続人を正確に調べておかないと、後から「実は相続人が他にもいた」というトラブルになる可能性があります。特に、離婚歴や認知した子どもがいる場合など、戸籍をしっかりと確認しないと相続人が漏れてしまうことがあります。
ここでは、相続人の調査方法について初心者の方にもわかりやすく説明します。

戸籍の収集

相続人を確定するためには、まず被相続人の除籍謄本をすべて集める必要があります。これは出生から死亡までの一連の戸籍を収集することで、配偶者や子ども、兄弟姉妹など相続人になり得る人を確認するためです。

集める戸籍の種類
  • 被相続人の戸籍の附票又は住民票の除票
  • 被相続人の死亡から出生までの全ての戸籍
  • 相続人全員の現在の戸籍・附票(または住民票)

被相続人の戸籍は、まず本籍地のある役所し、その戸籍を元に出生までたどります。転籍等がある場合はその戸籍のある役所に請求します。役所が遠隔地の場合は郵送請求で請求します。。古い戸籍は手書きのものや昔の形式のものも多く、読み取りに時間がかかることもあるため、早めに準備することが大切です。
被相続人に離婚歴があったり、認知した子どもがいる場合は、相続人が想定外に多くなるケースもあります。全戸籍を取得し、しっかりと確認することが重要です。
相続人の戸籍は相続人が存命であることを確認するために必要です。また現住所を確認するために附票(住民票)も必要です。
兄弟姉妹が相続人の場合は被相続人の兄弟が誰であるか確認するために両親の死亡から出生までの戸籍が必要になります。

財産調査

相続財産調査

相続人の確定と同時に行いたいのが「相続財産の調査」です。財産の内容によって相続手続きの内容が大きく変わるからです。財産の調査は、プラスの財産(資産)だけでなく、マイナスの財産(借金や負債)も含めて確認する必要があります。

調査する主な財産
  • 不動産(家・土地)
  • 預貯金(銀行口座)
  • 株式・投資信託
  • 生命保険
  • 自動車・貴金属・骨董品
  • 借金やローン
  • 未払い税金・滞納金

これらを調べることで、相続人がどのような手続きを進めればいいのか、また相続放棄や限定承認を検討するべきかの判断材料になります。

プラスの財産のみならずマイナスの財産も調べる

相続というと、つい資産ばかりに目が行きがちですが、実は借金やローンなどのマイナスの財産もすべて相続の対象になります。これを見落としてしまうと、後から多額の借金を抱えてしまうリスクがあるため、注意が必要です。

マイナスの財産の例
  • 銀行や消費者金融からの借入金
  • ローン(住宅ローン、車のローンなど)
  • クレジットカードの未払い残高
  • 税金や社会保険料の滞納分
  • 個人間の借用書による借金(借用書の有無)

財産調査を行った結果、マイナスの財産が大きくプラスの財産を上回る場合には、家庭裁判所に「相続放棄」や「限定承認」を申し立てることで借金を相続しない選択ができます。ただし、この申し立てには「相続開始を知った日から3ヶ月以内」という期限があるため、財産調査はできるだけ早く行うことが大切です。
相続人の調査と相続財産の調査は相続手続きの基礎であり、間違いが許されない重要な工程です。早めの行動と正確な確認が、後の相続手続きをスムーズに進めるポイントです。

相続放棄(3ヶ月以内)

相続手続きを進める上で重要なポイントの一つが、「相続放棄」や「限定承認」といった手続きです。これらは、相続人が亡くなった人(被相続人)の財産を引き継ぐかどうかを判断するための制度です。特に、相続する財産の中に借金や負債が多い場合、これらの手続きを行うことで相続人自身の生活を守ることができます。
ただし、相続放棄や限定承認は、相続が開始したことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てをしなければなりません。この期間を過ぎると、原則としてすべての財産(プラスもマイナスも)を相続したものとみなされてしまいます。したがって、財産調査を早めに行い、必要に応じて手続きを進めることが大切です。
ここでは、「相続放棄」の特徴について詳しく解説します。

相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産を一切相続しないとする法律上の手続きです。これにより、プラスの財産(現金や不動産など)も、マイナスの財産(借金やローンなど)も全て受け継がないことになります。特に、被相続人に多額の借金があることが判明した場合など、相続放棄は相続人自身の生活を守るために非常に有効な手段です。

相続放棄ができる人

相続放棄ができるのは、法律上の相続人にあたる人です。相続人の順位は以下の通りです。

  • 第1順位:子ども(代襲相続で孫なども含む)
  • 第2順位:父母や祖父母
  • 第3順位:兄弟姉妹(代襲相続で甥・姪も含む)

相続放棄の期限

相続放棄の申述は、相続が発生したこと(被相続人が亡くなったこと)を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申し立てを行わなければなりません。この3ヶ月を『熟慮期間』といいます。この期間内に放棄しないと、原則として財産や借金をすべて相続したとみなされてしまいます。

相続放棄の注意点
  • 相続放棄後に財産を処分すると、相続したと判断されてしまうリスクがある
  • 放棄後はプラスの財産も受け取れない
  • 次順位の相続人に連絡・配慮が必要になる
  • 相続放棄したことは、次の相続人に連絡してあげるとトラブル防止になる

相続放棄後の影響

相続放棄が認められると、その人は初めから相続人ではなかったことになります。ただし、借金の取り立てが一時的に来ることもあるため、その場合は相続放棄の受理証明書を提示することで対応できます。
相続放棄は、自分の生活を守る重要な制度ですが、期限や手続きに関しては慎重に進める必要があります。財産調査とあわせて、早めに専門家(司法書士・弁護士など)に相談するのがおすすめです。

準確定申告(4ヶ月以内)

相続手続きの中でも、あまり知られていないもののひとつが「準確定申告(じゅんかくていしんこく)」です。準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)が生前に所得を得ていた場合に行う税務手続きです。
通常の確定申告は、1年間の所得を税務署に申告し、所得税を納める手続きですが、亡くなった方の場合、その年の1月1日から死亡日までの所得について申告する必要があります。これが「準確定申告」です。
準確定申告は、相続が発生したことを知ってから4ヶ月以内に行わなければならないと法律で定められています。期限を過ぎると、延滞税や加算税などのペナルティが課される可能性もあるため、注意が必要です。

準確定申告とは

準確定申告とは、被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得について行う税務申告です。被相続人に所得があった場合、その分の所得税を計算し、税務署に申告・納税します。

準確定申告の目的〇被相続人の所得税の清算
〇国に対する税務手続きの完了
準確定申告が必要な期間その年の1月1日〜死亡日までの所得が対象
準確定申告の期限被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に申告・納税が必要
例えば、6月1日に亡くなった場合、10月1日までに準確定申告を行わなければなりません。
手続きする場所被相続人の住所地を管轄する税務署
提出者は誰?準確定申告は、基本的に相続人全員が連名で申告します。ただし、実務上は代表者(長男や代表相続人など)が手続きを行うケースが多いです。
必要書類・被相続人の所得内容がわかる資料(源泉徴収票・帳簿など)
・準確定申告書
・相続人全員の署名・押印
・戸籍謄本や住民票(必要に応じて)

準確定申告が必要な方

準確定申告が必要かどうかは、被相続人の生前の収入状況によって決まります。以下のいずれかに該当する場合は、原則として準確定申告が必要になります。

準確定申告が必要なケース
  1. 給与収入が2,000万円を超えていた
  2. 複数の会社から給与をもらっていた
  3. 年金収入が400万円を超えていた
  4. 事業所得(自営業)や不動産所得があった
  5. 給与、退職金以外の副業で20万円超の所得がある場合
  6. 株式の譲渡や不動産売却で利益があった
  7. 医療費控除や寄付金控除などの適用を受けたい場合

つまり、サラリーマンでも高所得者や年金受給者、自営業者、不動産オーナーなどは、準確定申告が必要になる可能性があります。一方、専業主婦や所得が年金だけで400万円未満の方は、準確定申告が不要なケースが多いです。

準確定申告が不要なケース
  • 年金収入のみで400万円以下かつその他の所得がない場合
  • 給与収入のみで年末調整が済んでいる場合
  • 所得税の還付申告をしない場合

ただし、所得が少ない場合でも、医療費控除やふるさと納税の控除、住宅ローン控除などの適用を受けたい場合は、準確定申告をすることで税金の還付を受けられるケースもあります。

注意点
  • 準確定申告が必要なのに忘れていると延滞税が発生する
  • 申告後に税金が還付されるケースもある
  • 早めに税理士や専門家に相談すると安心

相続手続きでは、遺産の分割や相続税の申告に気を取られがちですが、準確定申告も重要な手続きの一つです。所得状況をよく確認し、必要であれば期限内に申告・納税を行いましょう。

遺産分割協議

相続手続きを進める上で、大きなポイントとなるのが「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」です。これは、相続人全員が集まって、誰がどの財産を相続するのかを話し合い、決定するためのものです。相続財産には、不動産や預貯金、株式、車、貴金属、家具など多岐にわたるものが含まれます。
特に遺言書がない場合は、この遺産分割協議を通じて、相続人全員の合意を得ることが必要不可欠です。誰か一人でも反対したり、協議に参加できない相続人がいたりすると、遺産分割協議は成立しません。そのため、相続人全員が納得し、合意に至ることが大切です。

遺産分割協議が必要なケース

  • 遺言書がない場合
  • 遺言書があっても一部の財産しか指定されていない場合
  • 相続人全員が遺言の内容とは異なる分割方法に同意する場合

遺産分割協議の注意点

  • 相続人全員の参加が必要(相続放棄した人は除く)
  • 行方不明の相続人がいる場合は、家庭裁判所で特別代理人を選任する必要あり
  • 未成年の相続人がいる場合は、家庭裁判所で特別代理人を選任

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議がまとまったら、その内容を文書にまとめたものが「遺産分割協議書」です。これは、後々のトラブル防止や財産の名義変更手続きのために必要不可欠な書類です。

遺産分割協議書が必要な場面
  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 銀行口座の解約・名義変更
  • 株式や証券の名義変更
  • 自動車や各種資産の名義変更
遺産分割協議書の作成の流れ
  1. 相続人全員で協議を行い内容を決定
  2. 協議内容を文書にまとめる
  3. 相続人全員が実印で押印
  4. 相続人全員分の印鑑証明書を添付
遺産分割協議書の内容
  • 被相続人の氏名・死亡日
  • 相続人全員の氏名・住所
  • 相続財産の内容と分割方法
  • 各相続人の取得する財産の詳細
  • 全相続人の署名・押印(実印)
  • 印鑑証明書の添付
遺産分割協議書作成の注意点
  • 相続人全員の同意・署名・押印が必要
  • 署名・押印後に内容変更したい場合は再度協議が必要
  • 遺産分割のやり直しは贈与認定に注意
  • 書式に決まりはないが、不動産などの財産内容は正確に記載する
  • トラブル防止のため専門家(司法書士・行政書士・弁護士)に依頼するのも安心

遺産分割協議書がないとどうなる?

遺産分割協議書がないと、不動産の名義変更や預貯金の解約などができないケースが多いです。また、相続人同士の認識に食い違いが生じたり、後日トラブルになるリスクが高まります。
そのため、遺産分割協議書は相続手続きにおいて非常に重要な書類です。相続人全員が納得できる内容にまとめ、しっかりとした書面に残しておくことが、安心・円満な相続手続きにつながります。

遺産の分割

相続の手続きを進めるうえで、遺産分割協議がまとまり、遺産分割協議書が作成されたら、次は実際に財産の名義変更などの手続きを行う段階に入ります。相続財産は大きく分けて、不動産・預貯金・株式・自動車・その他の動産などがありますが、中でも多くの方が関わるのが「不動産」と「預貯金」の名義変更です。
この章では、遺産分割後に行う代表的な財産の名義変更手続きである「不動産の名義変更」と「預貯金の名義変更」について、初心者の方でもわかりやすいように詳しく解説します。

不動産の名義変更

不動産の名義変更とは、登記簿上の所有者を、亡くなった被相続人から相続人へ変更する手続きのことを指します。これは「相続登記」とも呼ばれ、不動産を所有する相続人が決まったら必ず行うべき重要な手続きです。

相続登記をしないとどうなる?

相続登記をしないままでいると、次のような問題が発生することがあります。

  • 不動産の売却ができない
  • 担保に入れられない(住宅ローンが組めない)
  • 相続人がさらに亡くなると手続きが複雑化
  • 不動産の共有者が増え、権利関係が複雑になる

2024年4月1日からは相続登記が義務化され、正当な理由がないのに3年以内に登記しないと10万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。したがって、相続登記はできるだけ早く行いましょう。

不動産の相続登記の手続きの流れ

1.必要書類の準備
○ 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
○ 被相続人の住民票の除票
○ 相続人全員の戸籍謄本・住民票
○ 遺産分割協議書
○ 不動産の固定資産評価証明書
○ 相続人全員の印鑑証明書
○ 法定相続情報一覧図
2.法務局への登記申請
不動産の所在地を管轄する法務局へ申請します。
3.登記完了通知の受け取り
手続きが完了すると法務局から通知があります。
注意点
  • 登記の専門知識が必要な場合も多いため、司法書士への依頼がおすすめです。
  • 登記費用は登録免許税(固定資産評価額の0.4%)と司法書士報酬がかかります。

預貯金の名義変更

預貯金の名義変更とは、亡くなった被相続人名義の銀行口座を解約し、相続人が相続するための手続きです。相続人全員の同意が必要で、銀行ごとに指定された書類を提出して手続きを行います。

預貯金はそのままだと凍結される?

銀行は、口座名義人の死亡を知ると、その口座を凍結(入出金ができない状態)にします。これは、相続人間のトラブルを防ぐための措置です。凍結解除・解約のためには、正式な相続手続きが必要になります。

預貯金の解約・名義変更の手続きの流れ

  1. 各金融機関に必要書類を確認
  2. 書類を準備
    • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
    • 相続人全員の戸籍謄本
    • 遺産分割協議書(または遺言書)
    • 法定相続情報一覧図
    • 相続人全員の印鑑証明書
    • 銀行所定の相続手続依頼書
  3. 各銀行の窓口や郵送で手続きを行う
  4. 払戻しや名義変更完了

注意点

  • 銀行によって手続きの流れや必要書類が異なることがあります。
  • 相続人が多い場合は手続きに時間がかかることもあります。
  • 金融機関によっては、遺産分割協議書のコピーではなく原本の提出を求められる場合もあります。

預貯金の相続は、金額に関係なく正式な手続きが必要です。複数の銀行に口座がある場合は、相続人の代表者がまとめて手続きを進めるとスムーズです。
不動産や預貯金の名義変更は、相続手続きの中でも時間と手間がかかる部分です。専門家に相談しながら、正確かつスムーズに進めることを心がけましょう。

相続税申告・納付(10ヶ月以内)

相続手続きの中で、最後の大きなステップとなるのが「相続税の申告と納付」です。これは、相続によって取得した財産に対して課税される税金のことです。ただし、すべての人が相続税を支払わなければならないわけではありません。相続税には「基礎控除額」という制度があり、この金額以下であれば相続税の申告や納付は不要となります。
とはいえ、相続税がかかるかどうかの判断は財産の調査と評価を正しく行わなければわかりません。また、相続税の申告や納付には期限があり、相続の開始(被相続人の死亡日)から10ヶ月以内に行わなければならないと法律で定められています。
この章では、初心者の方でもわかりやすいように、相続税の基本的な知識と申告・納付の流れ、注意点について詳しく解説します。

相続税がかかるかどうかの判断基準

相続税がかかるかどうかは、「基礎控除額」を超える財産を相続したかどうかで決まります。

相続税の基礎控除額の計算式
3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合、
3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
この4,800万円が基礎控除額となり、相続財産がこれを超える場合に相続税の申告が必要です。

相続財産に含まれるもの

相続税の対象となる財産は次のようなものがあります。

  • 土地・建物などの不動産
  • 現金・預貯金
  • 株式や投資信託などの有価証券
  • 自動車・貴金属・骨董品
  • 生命保険金(一部は非課税枠あり)
  • 死亡退職金(一部は非課税枠あり)
  • 借地権・貸家権などの権利関係

相続税の注意点

  • 申告期限は「相続開始から10ヶ月以内」
  • 期限を過ぎると加算税・延滞税がかかる
  • 節税対策は生前に行うのが基本
  • 必要書類が多いため早めの準備が重要

まとめ

相続手続きは、一つ一つの手続きが複雑で、しかも期限が決められているものが多いため、早めの行動が何より大切です。特に戸籍の収集や財産の調査には時間がかかることが多いため、相続が発生したらすぐに動き出すことをおすすめします。
また、手続きの内容によっては、司法書士・税理士・行政書士・弁護士といった専門家の力を借りた方がスムーズかつ確実に進められる場面も多々あります。相続人同士でのトラブル防止や、税務上のミスを防ぐためにも、早めに相談することが安心につながります。
相続手続きは「何から始めればいいのかわからない」と不安に思いがちですが、今回ご紹介した流れとポイントを参考に、一つずつ丁寧に進めていけば、きっとスムーズに対応することができます。焦らず、落ち着いて手続きを進めていきましょう。

面倒な相続手続き、専門家にお任せ下さい
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