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自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを徹底比較|費用・手続き・リスクまで解説

遺言書を作成しようと考えたとき、多くの方がまず悩むのが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」のどちらを選ぶべきか、という点です。どちらも法的に有効な遺言書であることに変わりはありませんが、作成方法や費用、手続きの手間、そして相続発生後の負担には大きな違いがあります。
特に、形式不備による無効リスクや、相続人にかかる手続き負担といった点は、事前にしっかり理解しておくことが重要です。ご自身の状況や目的に合った遺言書を選ばなければ、せっかくの「想い」が正しく実現されない可能性もあります。
本記事では、自筆証書遺言(自己保管・法務局保管)と公正証書遺言の違いを一覧表で整理したうえで、それぞれの特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。まずは全体像を把握するために、以下の比較表をご覧ください。
自筆証書遺言と公正証書遺言の比較一覧
まずは、それぞれの特徴をまとめた比較表をご覧ください。
| 比較項目 | 自筆証書遺言(自己保管) | 自筆証書遺言(法務局保管) | 公正証書遺言 |
|---|---|---|---|
| 作成方法 | 全文・日付・氏名を自署、押印 | 全文・日付・氏名を自署、押印(様式指定あり) | 公証人が遺言者の口述を筆記し作成 |
| 証人の要否 | 不要 | 不要 | 2名以上必要 |
| 保管場所 | 自宅など(自己管理) | 法務局(遺言書保管所) | 公証役場 |
| 検認の要否 | 必要(家庭裁判所) | 不要 | 不要 |
| 作成時の費用 | 0円(用紙代等のみ) | 3,900円(申請手数料) | 公証人手数料(財産額による) |
| 形式不備のリスク | 極めて高い | 低い(窓口で外観確認あり) | ほぼなし |
| 身体的負担 | 高い(全文自署が必要) | 高い(全文自署が必要) | 低い(口述や代署が可能) |
| 改ざんのリスク | あり | なし | なし |

自筆証書遺言の特徴とメリット・デメリット
自筆証書遺言とは
民法第968条に基づき、遺言者がその全文、日付、および氏名を自ら書き(自署)、押印することで成立する遺言です。特別な費用をかけず、思い立ったその日に自宅で作成できるのが最大の特徴です。
自筆証書遺言のメリット
- 手軽さとスピード: 証人を集める必要もなく、用紙とペン、印鑑さえあれば今すぐにでも作成・書き直しが可能です。
- 圧倒的な低コスト: 専門家への相談料を除けば、作成自体に費用はかかりません。
- 完全なプライバシー: 誰にも内容を知られずに、秘密裏に作成・保管することができます。
自筆証書遺言のデメリットと極めて厳しいルール
自由度が高い反面、自筆証書遺言には「形式不備で無効になる」という最大の弱点があります。
- 形式不備のリスク: 「○月吉日」と書く、印鑑を忘れる、本文をパソコンで打つ(※財産目録を除く)、といった些細なミスで遺言書全体が無効になります。
- 紛失・改ざんの危険: 自宅保管の場合、相続人によって隠匿されたり、自分に不利な内容を書き換えられたりするリスクが拭えません。
- 訂正方法の厳格さ: 書き損じを訂正する場合、単に二重線を引くだけでは足りません。訂正箇所に二重線を引いて押印し、その横に正しい文字を書いた上で、余白や末尾に「○行目○文字削除○文字加入」と付記し、さらに署名しなければなりません。このルールを一つでも誤ると、訂正自体が無効とみなされる恐れがあります。

【注目】法務局の「自筆証書遺言書保管制度」
令和2年から開始されたこの制度を利用すれば、自筆証書遺言の弱点の多くを克服できます。法務局に預けることで紛失や改ざんを防ぎ、後述する「検認」も不要になります。ただし、利用には非常に細かい事務的ルールがあるため注意が必要です。
- 作成上の細かな指定: A4サイズの用紙を使用し、上20mm、左20mm、右5mm、下10mm以上の余白を空けなければなりません。また、片面のみの記入とし、複数枚あってもホチキス留め(合鉄)や封印をしてはいけないという独自の決まりがあります。
- 本人出頭の原則: 申請には必ず本人が法務局の窓口へ出向く必要があり、顔写真付きの本人確認書類(マイナンバーカード等)が必須です。
重要:受遺者の住所記載という「落とし穴」
この制度を利用する際、実務上最も見落としやすいのが「受遺者(相続人以外で財産を受け取る人)の正確な住所記載」です。 通常の自筆証書遺言であれば、受遺者が誰であるか特定できれば(氏名と続柄など)有効ですが、法務局の保管制度を利用するための「保管申請書」には、受遺者の住所を100%正確に(住民票通りに)記載しなければなりません。
これは、遺言者が亡くなった後に法務局が相続人等へ通知を送るために必要な情報だからです。生前お世話になった知人や、特定の団体に遺贈したいと考えていても、その正確な住所が不明であればこの制度は利用できません。認知症などで判断能力を失う前に、あらかじめ受遺者の正確な情報を把握しておくことが不可欠です。
公正証書遺言の特徴とメリット・デメリット
公正証書遺言とは
公正証書遺言は、遺言者が公証役場へ赴き、2名以上の証人の立ち会いのもと、遺言内容を公証人に口頭で伝えて(口述して)作成する公文書です。
公正証書遺言のメリット
- 絶対的な法的確実性: 法律の専門家である公証人が作成するため、形式不備で無効になることはまずありません。
- 保管の安全性: 原本は公証役場で厳重に保管(120歳までが目安)されるため、紛失や偽造の心配はゼロです。
- 検認不要: 相続発生後、即座に銀行解約や不動産の名義変更が可能です。
- 身体的不自由への対応: 病気等で字が書けない場合でも、公証人が代筆(代署)し、必要であれば指印で作成することも認められています。
公正証書遺言のデメリット
- 費用と手間の発生: 公証人への手数料がかかります。また、戸籍謄本や固定資産評価証明書などの資料収集、公証人との事前打ち合わせが必要です。
- 証人の手配: 証人2名が必要です。未成年者、推定相続人、受遺者、およびその配偶者や直系血族はなれません。また、公証役場の職員や書記も証人にはなれないため、信頼できる第三者や専門家(司法書士等)に依頼するのが一般的です。
公正証書遺言作成にかかる費用の目安
費用は「将来のトラブルを未然に防ぐための備え」とお考えください。数千万円、数億円という遺産をめぐる争いを回避するための有効な対策としては、決して高いものではありません。手数料は受け取らせる財産額ごとに決まります。(例:1人に対して2,000万円を相続させる場合の手数料は2万6,000円)

さらに、全体の財産額が1億円以下の場合は、一律で1万1,000円の「遺言加算」が必要です。公証役場への相談自体は無料ですが、資料収集や複雑な文案の作成、証人の立ち会いなどを行政書士がサポートする場合、別途報酬が発生します。その分、法的に万全で、かつお客様の「想い」を汲み取った遺言書をコーディネートいたします。
相続発生後の手続きの違い:検認とは何か
遺言書の形式によって、残されたご家族の負担は劇的に変わります。
検認手続きの負担
「通常の自筆証書遺言」が見つかった場合、家庭裁判所で「検認」を受けなければなりません。これは、相続人全員の前で遺言書を開封し、内容を確認して偽造を防ぐ手続きです。 このためには、亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍、および相続人全員を特定するための戸籍謄本を収集しなければなりません。申し立てから検認日まで1〜2ヶ月かかり、その間、銀行口座は凍結されたままです。相続人全員に裁判所から呼び出し状が届くため、心理的なストレスも非常に大きくなります。

各形式と検認の要否
- 通常の自筆証書遺言:必要(非常に負担が大きい)
- 法務局保管の自筆証書遺言:不要(スムーズ)
- 公正証書遺言:不要(最もスムーズ)
どちらの遺言書を作成すべきか?選ぶための判断基準
法的な「効力の強弱」に違いはありません。もし内容が矛盾する遺言書が複数出てきた場合は、「日付が新しいもの」が優先されます。
しかし、実務上の「安心感」は公正証書遺言がバツグンです。 公証人が本人の意思と判断能力を直接確認して作成するため、後から相続人が「認知症で判断能力がなかったはずだ」と無効を訴えても、それを覆すのは極めて困難です。親族間に緊張感がある場合や、複雑な分割を希望する場合は、迷わず公正証書遺言を選ぶべきでしょう。
一方で、財産内容が非常にシンプルで、かつ頻繁に内容を書き直したい、あるいは当面の費用を抑えたいという場合は、自筆証書遺言(必ず法務局保管制度を利用すること)が有力な選択肢となります。
まとめ
遺言書は、単に財産を分けるための書類ではなく、ご自身の想いを確実にご家族へ届けるための大切な意思表示です。しかし、自筆証書遺言には形式不備や保管上のリスクが伴い、場合によってはその想いが実現されない可能性もあります。
その点、公正証書遺言であれば、法律の専門家である公証人が関与することで、法的に確実かつ安全に遺言を残すことができます。さらに、専門家のサポートを受けることで、内容の不備や手続きの煩雑さに悩むことなく、ご自身の意向を的確に反映した遺言書を作成することが可能です。
当事務所では、公正証書遺言の作成にあたり、必要書類の収集から文案の作成、公証人との調整、証人の手配までトータルでサポートしております。初めての方でも安心して進めていただけるよう、丁寧にご案内いたします。
「自分の場合はどの遺言書が適しているのか知りたい」「具体的な手続きや費用について相談したい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
まずは下のバナーからお気軽にお問い合わせいただき、将来に向けた確かな一歩を踏み出しましょう。


