相続で揉めないために―遺留分の正しい理解と生前対策のポイント

「親の遺言で自分の取り分がなかった…」
そんな声を耳にしたことはありませんか?実は、たとえ遺言があっても、相続人には最低限の取り分を守る“遺留分”という制度があります。
遺留分は、遺言や生前贈与によって不公平な相続が行われた場合に、法定相続人が取り戻すことができる大切な権利です。
この制度を正しく理解しておくことは、遺言を書く人にとっても、相続する人にとっても、トラブルを防ぐうえで非常に重要です。
この記事では、遺留分の基本から請求手続き、トラブル防止の対策まで、わかりやすく解説します。
これから遺言や相続を考えるすべての方に役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

遺留分とは何か?法定相続人の最低保障

遺留分の基本的な意味と目的

遺留分とは、法定相続人が最低限受け取ることができる遺産の割合を指します。
これは、被相続人が遺言によって全財産を他人に与えるといった極端な分配を行っても、一定の範囲で相続人の権利を守るために設けられた制度です。
遺留分の制度があることで、配偶者や子どもなどの近親者が、生活の基盤を失うリスクを軽減できます。
個人の自由な財産処分と、遺族の生活保障という2つの観点をバランスよく保つのが、この制度の目的です。

法定相続分との違い

法定相続分は、遺言がない場合に、民法に基づいて決められた相続の割合です。
一方、遺留分は、相続人の最低限の取り分を保障するための制度であり、遺言の有無にかかわらず適用されます。
つまり、遺言で誰かにすべての遺産を渡すと記されていても、相続人が遺留分を主張すれば、その分だけは取り戻せるという違いがあります。
このため、遺言の内容があっても、遺留分の存在は大きな意味を持ちます。

遺留分が保障される相続人の範囲

遺留分が認められるのは、以下の法定相続人に限られます。

  • 配偶者
  • 子(または代襲相続人)
  • 直系尊属(親など)※子がいない場合

兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
このため、遺言で兄弟に不利な内容が書かれていても、遺留分を主張することはできない点に注意が必要です。

遺言と遺留分の関係

遺言で遺留分は侵害されるのか

結論からいえば、遺言によって遺留分が侵害されることはあります。
しかし、そのような遺言がただちに無効になるわけではありません。
遺留分を侵害された相続人は、金銭による補償を求めることができます。
これが「遺留分侵害額請求」であり、請求を行うことで取り分を取り戻すことが可能です。

なぜ遺留分を侵害する遺言が作成されるのか

主な理由としては、特定の人物に多くの財産を与えたいという被相続人の意思があります。
例えば、内縁の配偶者や長年介護してくれた子どもに感謝の意を込めて多く残すなどです。
また、家族との関係が悪化していた場合なども、遺言で相続人を排除しようとするケースがあります。
しかし、このような遺言でも、遺留分を侵害していれば争いの種になる可能性があります。

遺留分侵害額請求とは?手続きの流れと注意点

遺留分侵害額請求とは金銭での請求手続き

遺留分を侵害された相続人は、侵害した相手に対して金銭の支払いを請求できます。
この手続きが「遺留分侵害額請求」です。
実際の遺産を分けるのではなく、金銭で解決するのが基本です。
請求先は、過剰に相続や贈与を受けた相手となり、時には被相続人の配偶者や子どもが対象になることもあります。

調停・訴訟に進むケースもある

請求を受けた相手が支払いに応じない場合、家庭裁判所での調停に進みます。
調停でも解決しないときは、訴訟に発展することもあります。
この場合、弁護士のサポートが重要です。
証拠書類の収集や法的主張の整理など、専門的な知識が求められるからです。

遺留分請求の対象となる財産の種類

遺贈・死因贈与・生前贈与の違いと対象範囲

遺留分の対象になる財産には、以下のようなものがあります。

種 類内 容遺留分の対象
遺 贈遺言による無償の財産譲渡
死因贈与死亡を条件とした契約による贈与
生前贈与生前に行われた贈与条件付きで○

生前贈与は、相続開始前1年以内のものや、遺留分を侵害すると分かって行われた場合、対象になります。
また、特別受益とみなされる贈与も計算に含まれます。

相続人への特別受益とその影響

特別受益とは、特定の相続人が他の相続人よりも多くの財産を受け取っていた場合を指します。
これは、相続分の公平を保つために考慮されます。
たとえば、長男が生前に多額の援助を受けていた場合、それは遺産の前渡しとみなされる可能性があります。
この場合、遺留分の計算に影響し、他の相続人が不利益を受けないよう調整されます。

遺留分の割合

相続人の組み合わせ別・遺留分の割合早見表

以下の表は、相続人の組み合わせによる遺留分の割合です。

相続人の構成遺留分の割合
配偶者と子遺産の1/2
(配偶者1/4、子1/4)
配偶者と直系尊属(親)遺産の1/2
(配偶者2/6、親1/6)
配偶者のみ遺産の1/2
子のみ遺産の1/2
直系尊属のみ遺産の1/3
兄弟姉妹のみなし(遺留分なし)

遺留分の割合は民法により明確に定められています。
ただし、実際の請求には個別の事情が影響するため、注意が必要です。

請求の時効と注意すべき期限

遺言や贈与の前に配慮すべきポイント

トラブルを未然に防ぐには、遺言や贈与の段階で遺留分に配慮しておくことが重要です。
特に特定の人に多く財産を渡す場合は、他の相続人とのバランスを考える必要があります。
また、生前贈与の記録を残しておくことも大切です。
後の紛争を防ぐためには、証拠として役立つからです。

家族間の情報共有と話し合いの重要性

遺産分割に関するトラブルの多くは、情報不足や誤解から生じます。
家族間で事前に話し合いを行い、意向を共有しておくことで、争いの発生を抑えることができます。
特に高齢の親を持つ家庭では、元気なうちに家族会議を設けることが理想的です。

弁護士や専門家に相談するメリット

遺留分に関する問題は、法的な知識が求められるため、専門家への相談が有効です。
弁護士に依頼すれば、書類の作成や交渉、調停・訴訟への対応まで一貫して任せることができます。
また、行政書士や税理士と連携することで、相続全体の手続きを円滑に進めることが可能になります。
安心して相続に向き合うためにも、早めの相談をおすすめします。

まとめ

遺留分は、相続における重要な権利であり、遺された家族の生活を守る制度です。
しかし、遺言や贈与との関係も複雑で、思わぬトラブルに発展することも少なくありません。
遺言書を作成する方はもちろん、相続を受ける側にとっても、遺留分への理解と適切な対策が不可欠です。
相続に関する知識が不十分なまま対応してしまうと、大切なご家族との関係に亀裂が生じる恐れもあります。
そのような事態を防ぐためにも、専門知識を持つ行政書士にご相談いただくことをおすすめします。
当事務所では、遺言書の作成から遺留分に関するアドバイス、相続手続き全般まで丁寧にサポートしております。
相続や遺言に不安を感じている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
安心して次の一歩を踏み出せるよう、誠心誠意お手伝いさせていただきます。

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