相続手続きは自分でできる?判断基準と注意点を解説

相続の手続きを目前にして、「どこから手をつければよいかわからない」「できることなら自分で進めたいけれど、不安がある」と感じている方も多いのではないでしょうか。
相続手続きは、ご家族を亡くされた直後の慌ただしい時期に行わなければならず、精神的にも体力的にも大きな負担となります。 一方で、状況によっては自分で手続きを進めることも可能です。
本記事では、相続手続きの全体像から、自分で対応できるかどうかの判断基準、専門家に任せたほうがよい場面までを丁寧に解説しています。 「自分でできること」と「専門家に任せるべきこと」を整理する一助として、ぜひ参考になさってください。
相続手続きは、状況によっては自分で進めることも可能ですが、時間や知識、関係者の協力などが必要になります。 この記事では、手続きの全体像から、メリット・デメリット、自分で行ってよいケースと避けるべきケースまでを丁寧にご紹介しています。
専門家に相談すべき手続きについても触れていますので、ご自身の状況と照らし合わせながら参考にしてください。

目次

相続手続きは自分でできる?全体像を解説

相続手続きの基本的な流れとは

相続手続きには多くの工程がありますが、大きく分けると次のような流れになります。
まず、亡くなった方の戸籍をすべて取得して、法定相続人を確定します。 次に、預貯金や不動産などの財産を調査し、相続財産の全体像を把握します。
その後、相続人全員で遺産分割の協議を行い、遺産分割協議書を作成します。 協議がまとまったら、金融機関での預金の解約手続きや、不動産の名義変更(相続登記)などの実務に移ります。
相続税の申告が必要な場合は、相続開始から10ヶ月以内に申告・納税する必要があります。 このように、相続手続きには期限があるものも多く、計画的に進めることが重要です。

相続手続きの大まかな流れ
  1. 亡くなった方の戸籍をすべて取得して、法定相続人を確定
  2. 預貯金や不動産などの財産を調査し、相続財産の全体像を把握
  3. 相続人全員で遺産分割の協議を行い、遺産分割協議書を作成
  4. 金融機関での預金の解約手続きや、不動産の名義変更(相続登記)など

※相続税の申告が必要な場合は、相続開始から10ヶ月以内に申告・納税する必要がある。

自分でできるか判断するための視点

相続手続きを自分で進めるには、いくつかの判断基準があります。
第一に、手続きに必要な時間を確保できるかが大きなポイントです。 金融機関や役所への訪問は平日が基本となるため、仕事をしている方には負担が大きくなります。
また、相続財産の種類や相続人の人数によって、必要な書類や手続きの難易度も変わります。 預貯金だけの相続であれば比較的シンプルですが、不動産や有価証券が含まれる場合は専門知識が必要になります。
さらに、相続人同士の関係性も重要です。 協力的で話し合いがスムーズに進む場合は問題ありませんが、意見の対立があると自力での対応は困難になります。

自分で相続手続きをおこなうメリットとデメリット

自分で手続きするメリット

自分で相続手続きを行う最大のメリットは、費用を抑えられることです。
司法書士や税理士・行政書士などの専門家に依頼すると、数万円から数十万円の費用がかかります。 一方、自分で行えばこの費用を節約できます。 また、手続きを通じて相続に関する知識が身に付き、家族の財産状況を深く理解することにもつながります。
さらに、第三者が介在しない分、プライバシーが守られるという利点もあります。 財産の内容を他人に知られたくない方には、自分での手続きが向いている場合もあります。

自分で手続きするデメリット

一方で、自分で行う手続きには大きなデメリットもあります。
まず、必要な書類の収集に多大な時間と労力がかかります。 また、不備があれば再提出や修正が必要になるため、ストレスが大きくなりがちです。
専門知識がないと、相続税の計算や不動産の評価などを正確に行うことが難しく、結果的に損をしてしまう可能性もあります。 さらに、手続きの不備によってトラブルが生じると、家族間の関係に悪影響を及ぼすこともあります。

自分で相続手続きを進めても良いケース

時間と根気がある人に向いている場合

相続手続きを自分で行うには、ある程度の時間的余裕と根気が求められます。
金融機関や役所に何度も足を運び、必要書類を一つずつ集めていく作業は、想像以上に労力がかかります。 また、各種書類の記載内容も正確に確認しながら作成する必要があります。
そうした作業を地道にこなせる人には、自分での相続手続きが適していると言えるでしょう。 逆に、短期間で済ませたい、細かい作業が苦手という方には向いていません。

単独相続・協力的な相続人がいる場合

相続人が1人、または少人数で全員が協力的な場合には、手続きが比較的スムーズに進みます。
遺産分割協議も不要、もしくは短時間で合意が取れるため、トラブルのリスクも低くなります。
特に単独相続であれば、戸籍の収集や金融機関の手続きも自分ひとりで完結でき、時間と手間の面でも有利です。 家族関係が良好で、事前に相続について話し合っていたケースでは、自分での対応も現実的です。

相続財産がシンプルな場合

相続財産の種類や内容がシンプルな場合も、自分での手続きが可能です。
例えば、財産が預貯金のみで不動産や株式が含まれていないケースでは、評価や名義変更の手間が少なくなります。
また、相続税の申告が不要な範囲であれば、税務署とのやり取りも不要になります。 相続人の人数も少なく、協議が不要または簡単に済む場合には、専門家に頼らなくても対応可能なことが多いです。

自分でやらないほうがよい相続ケースとは

忙しくて時間に余裕がない場合

仕事や家庭の事情で忙しく、平日に時間が取れない方には、自分での相続手続きは負担が大きくなります。
役所や金融機関の手続きは、ほとんどが平日のみ対応です。 そのため、何度も休みを取る必要があり、業務に支障が出ることもあります。
時間に余裕がない状況では、ミスや抜け漏れのリスクも高まるため、最初から専門家に依頼する方が安心です。

相続人間に争いがある場合

相続人同士の関係が悪化していたり、遺産分割で対立が予想される場合には、自分での対応は避けるべきです。
遺産分割協議は、全員の合意が必要です。 意見の食い違いや感情的な衝突があると、手続きが進まなくなってしまいます。
そのようなときには、専門家が間に入って調整を行うことで、冷静な対応と円滑な解決が図れます

不動産や事業などが絡み相続が複雑な場合

相続財産に不動産や非上場株式、事業などが含まれる場合は、評価や手続きが非常に複雑になります。
登記や税務処理には専門的な知識が求められ、誤った処理は大きなトラブルの原因になります。
また、相続税の対象となることが多いため、税務署とのやり取りにも対応が必要です。 複雑な内容の相続には、最初から専門家に相談するのが賢明です。

自分での対応が難しい相続手続きの種類

裁判所が関与する相続放棄・限定承認

相続放棄や限定承認の手続きは、家庭裁判所への申立てが必要です。
これらは相続開始から3ヶ月以内に行わなければならず、手続きの遅れは大きな不利益を生む可能性があります。
書類の不備や記載ミスによって、申立てが却下されることもあるため、正確な対応が求められます。
特に限定承認は制度の内容が複雑で、専門知識がないと適切な判断ができません。

税務署への相続税申告

相続税の申告は、相続開始から10ヶ月以内に行う必要があります。
相続財産の評価、特例の適用、納税額の計算など、非常に多くの専門知識が必要です。
少しの計算ミスや記載漏れが税務調査につながることもあるため、税理士のサポートを受けるのが一般的です。
財産の種類や金額によっては、相続税の負担を軽減できる制度もあるため、申告に慣れていない方は専門家に依頼するのが安心です。

不動産の名義変更(相続登記)

不動産の相続登記は、法務局で行う必要があります。
必要書類の数が多く、書き方や提出のタイミングにも注意が必要です。 また、登記の方法によっては将来的な権利関係に大きな影響を及ぼすこともあります。
複雑な登記内容や複数の相続人が絡む場合は、司法書士など専門家の助言が不可欠です。

相続手続きに不安がある方は専門家へご相談を

相続手続きは、自分で進めることも可能ですが、手間や知識が求められる場面が多くあります。
特に相続財産が多い場合や、相続人間での調整が難しい場合、あるいは税金・登記が関係する手続きは、専門家に相談するのが安心です。
当事務所では、行政書士が遺言・相続に関するご相談を丁寧にお受けし、必要に応じて手続きの代行も承っております。
「何から始めればよいか分からない」「なるべくスムーズに終えたい」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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