法定相続情報一覧図: 住所なしの選択と相続関係説明図との違い

相続の話が出た瞬間、「戸籍を集める」「書類が山ほど必要」と聞いて、気が重くなってしまう方は少なくありません。何から手を付ければいいのか分からず、不安だけが先に立ってしまうこともあるでしょう。そんな相続手続きを少しでも分かりやすく、負担を軽くするために用意されているのが「法定相続情報一覧図」です。しかし、調べていくと「相続関係説明図との違いは?」「住所は書かなくても大丈夫?」と、次々に疑問が湧いてきます。この記事では、法定相続情報一覧図の基本から、住所なしを選ぶ場合の注意点、相続関係説明図との違いまでを、わかりやすく解説しています。

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目次

法定相続情報一覧図とは

相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて集める必要があり、その量と煩雑さに多くの方が頭を悩ませます。「法定相続情報一覧図」とは、この負担を軽減するために2017年に始まった「法定相続情報証明制度」に基づいて、法務局が発行する公的な証明書です。この証明書は、亡くなられた方(被相続人)とその法律上の相続人(法定相続人)が誰であるかという関係性を、A4サイズ1枚の家系図のような形式で分かりやすくまとめたものです。主な目的は、相続手続きの際に必要となる大量の戸籍謄本や除籍謄本の束に代わるものとして利用し、手続きを簡素化・迅速化することにあります。この一枚があれば、不動産の相続登記、預貯金の払い戻し、株式の名義変更、相続税の申告といった、さまざまな相続手続きをスムーズに進めることが可能になります。

法定相続情報一覧図と相続関係説明図の大きな違い

相続手続きにおいて、「法定相続情報一覧図」とよく似た書類に「相続関係説明図」があります。どちらも相続関係を示す家系図のようなものですが、その性質と効力は全く異なります。両者の主な違いを3つのポイントで解説します。

① 法務局の認証と「公的な証明力」の有無

両者の最も決定的な違いは、法務局による認証の有無と、それに伴う証明力の差です。

  • 法定相続情報一覧図
    法務局の登記官が戸籍謄本等の内容を精査し、その内容が正しいことを認証した「お墨付き」のある公的な証明書です。そのため、この証明書1枚で、相続関係を証明するために必要な戸籍謄本一式の代わりとして機能します。各種相続手続きにおいて、大量の戸籍を持ち歩き、提出する必要がなくなります。
  • 相続関係説明図
    相続人が任意で作成する私的な説明資料であり、法務局の認証はありません。したがって、この書類単独では相続関係を証明する効力はなく、相続手続きで提出する際は、必ず根拠となる戸籍謄本一式をセットで添付する必要があります。

② 記載内容と作成の自由度

記載できる内容や作成の自由度にも大きな違いがあります。

  • 相続関係説明図の自由度
    記載内容に厳格なルールはなく、作成者が相続関係を分かりやすく説明するために、自由に情報を追加できます。例えば、遺産分割協議の結果、不動産を取得しないことになった相続人の情報や、相続放棄をした人の事実、さらには数次相続(二次相続)が発生している状況などを一枚の図にまとめて記載することが可能です。
  • 法定相続情報一覧図の制限
    記載できる事項は法律で厳密に定められています。証明する内容は、あくまで戸籍情報に基づいた「相続開始時点」での法定相続関係のみです。そのため、原則として、代襲相続が発生した場合の被代襲者(亡くなった子など)、廃除された相続人、数次相続の事実は記載されません。
    ※相続放棄をした人については、相続人として氏名等は記載されますが、「相続放棄をした」という事実は記載されません。

③ 作成方法と手続き

書類が完成するまでのプロセスも異なります。

  • 法定相続情報一覧図 相続人が戸籍情報に基づいて作成した後、収集した戸籍謄本一式と共に法務局へ「申出」という正式な手続きを行う必要があります。その後、登記官による内容の審査を経て、認証文が付された写しが交付されます。このプロセスには、通常、数日から数週間程度の期間を要します。
  • 相続関係説明図 相続人が戸籍を基に自由に作成します。手書きで作成することも、パソコンで作成することも可能です。法務局への申請や審査といった手続きは一切不要です。

法定相続情報一覧図を住所なしで作成するメリット・デメリット

法定相続情報一覧図を作成する際、相続人の住所を記載するかどうかは任意で選択できます。住所を記載しない「住所なし」のケースと、記載するケースにはそれぞれメリットとデメリットがあります。

相続人の住所記載は任意

法定相続情報一覧図には、被相続人の最後の住所を記載することが必須とされています。一方で、相続人全員の住所については、記載するかどうかを申出人が任意で選ぶことができます。

住所を記載しない(住所なし)場合

相続人の住所を記載しない場合の利点と欠点は以下の通りです。

  • メリット
    • 法務局への申出時に、各相続人の住民票の写し等を添付する必要がなくなるため、書類収集の手間と費用をわずかに省くことができます。
    • プライバシー保護の観点から、ご自身の住所を証明書に記載したくない場合に適しています。
  • デメリット
    • 不動産の相続登記や家庭裁判所での遺言書の検認手続きなど、相続人の住所証明が必要となる手続きでは、法定相続情報一覧図とは別に、相続人全員の住民票の写しや戸籍の附票などを提出する必要があります。これは、法定相続情報一覧図の大きなメリットの一つである「ワンストップでの本人確認」という利便性を損なうことになります。
    • 手続き先が複数ある場合、その都度、住所を証明する書類を準備する手間が増えてしまう可能性があります。

そのため、不動産の相続登記が含まれる場合や、複数の金融機関で手続きを行う予定がある場合は、後々の手間を省くために、はじめから相続人全員の住所を記載しておくことを強くお勧めします。

住所を記載する場合

相続人の住所を記載する場合の利点と欠点は以下の通りです。

  • メリット
    • 法定相続情報一覧図自体が相続人の住所証明書を兼ねるため、不動産登記などの手続きで別途住民票などを提出する手間が省け、手続きが非常にスムーズになります。
    • 複数の金融機関や証券会社での名義変更手続きなどを効率的に進めることができます。
  • デメリット
    • 法務局への申出時に、相続人全員分の住所を証明する書面(住民票の写しなど)を添付する必要があります。
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どちらを選ぶべき?ケース別活用法

これまでの比較を踏まえ、ご自身の状況に応じてどちらの書類が適しているか、具体的なケースを基に解説します。

法定相続情報一覧図が便利なケース

以下のような状況では、「法定相続情報一覧図」を取得することで手続きの負担を大幅に軽減できます。

  • 相続手続きを行う金融機関(銀行・証券会社)が多い、または管轄の異なる不動産が複数ある場合。
    金融機関によっては、手続きが完了するまで戸籍謄本の原本一式を預かってしまうことがあります。その場合、書類が返却されるまで他の手続きを進められませんが、法定相続情報一覧図なら写しを必要な枚数だけ無料で取得できるため、各所に同時に提出できます。
  • 複数の相続手続きを同時並行で進めたい場合。
    戸籍謄本の原本還付を待つ必要がなくなり、時間を有効活用して効率的に手続きを進められます。
  • 大量の戸籍謄本の束を持ち歩く手間や、紛失するリスクを避けたい場合。
    A4サイズ1枚で済むため、管理が容易で安全です。

相続関係説明図で十分なケース

一方で、以下のような状況では、あえて時間のかかる「法定相続情報一覧図」を取得せず、「相続関係説明図」と戸籍謄本一式で対応する方が効率的な場合があります。

  • 相続手続きの対象が、不動産1つと金融機関1〜2箇所など、少数に限られている場合。
    戸籍謄本一式をそのまま提出する方が、一覧図の発行を待つよりも早く手続きが完了することがあります。
  • 相続手続きを急いで完了させたい場合。
    法定相続情報一覧図の交付には一定の時間がかかるため、その時間を待たずに手続きを進めたいときに適しています。
  • 数次相続が発生しており、一連の相続関係を一枚の図で分かりやすく金融機関等に説明したい場合。
    相続関係説明図なら、法定相続情報一覧図では記載できない複雑な相続関係も自由に表現できます。

まとめ

法定相続情報一覧図は、相続手続きを大きく効率化できる便利な制度ですが、記載内容や住所の有無によって、その使い勝手は大きく変わります。誤った内容で作成してしまうと、金融機関や法務局で使えなかったり、結局追加書類が必要になったりするケースも少なくありません。特に、相続関係が少しでも複雑な場合や、不動産を含む相続では、最初の判断ミスが後々の大きな手間につながります。

行政書士に依頼すれば、戸籍収集から相続関係の正確な整理、住所記載の要否判断、法務局への申出書類作成までを一括で任せることができます。ご自身で悩みながら進める必要がなく、「この一覧図で本当に足りるのか」という不安も解消できます。相続手続きは一度きりの重要な場面だからこそ、確実性と効率を重視することが大切です。法定相続情報一覧図の作成で迷ったら、早い段階で相続手続きに精通した行政書士へ相談することが、円滑な相続への近道といえるでしょう。ぜひ弊所にご相談下さい。

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