エンディングノート(えんでぃんぐのーと)

目次

エンディングノートとは?

エンディングノート(または終活ノート)とは、残される家族が困らないように、自分しか知らない重要な情報や、自分の死後の希望、手続きの方法などを書き残しておくためのノートです。これは「自分の人生の終末について記したノート」であり、万が一に備えて家族や友人に伝えておきたいことや自分の希望を書き留めておけるものです。しかし、単に死に向かうためだけでなく、「自分の人生を振り返り、自分を見つめ直し今後に生かすために頭を整理する、とても便利なツール」でもあります。

エンディングノートは、遺言書のような堅苦しい形式は必要なく、自分が思うまま自由なスタイルで書くことができます。市販の専用ノートだけでなく、普通のノートや手紙形式、あるいはパソコンの文書作成ソフトなどで作成しても問題ありません。自治体や法務省、日本司法書士会連合会が提供する無料フォーマットを活用することも可能です。気軽に書けて、何度でも書き直したり修正したりできる点が大きな特徴です。

遺言書との違い

エンディングノートと遺言書の最も重要な違いは、法的効力があるかないかです。

エンディングノート

記載した内容に法的効力は一切ありません。
あくまでも個人の希望や情報の備忘録であり、例えば財産の相続について記載しても、遺言書がなければその通りに実行される保証はありません。

遺言書

法的な強制力があり、その内容が法的に有効であれば、相続人であってもそれに従う必要があります。
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、それぞれ民法で定められた厳格な作成要件を満たす必要があります。書ける内容は死後に関することに限られ、範囲も厳密に決められています(例:遺産相続、子どもの認知など)。

例えば、夫がエンディングノートに「長男と長女には財産を相続させない」と書いていたとしても、それが正式な遺言書ではない場合、長男と長女が納得しなければ、夫の希望は無視され、法定相続分通りに遺産分割が行われる可能性があります。特定の人に財産を相続させたい場合は、エンディングノートではなく、きちんとした遺言書にその意思を書き残すことが不可欠です。

エンディングノートを作成するメリット

エンディングノートを作成することには、多くのメリットがあります。

家族の負担を軽減できる

  • 自身の死後、家族が事務的な手続きや遺産分割で困惑するのを防ぐことができます。
  • 金融機関の口座情報、生命保険の手続き先、貴重品や重要書類の保管場所などがまとめられていれば、家族はそれらを探す手間なく、スムーズに手続きを進めることが期待できます。
  • 本人の医療・介護に関する希望や葬儀・お墓の希望が明記されていれば、意思表示ができなくなった際も、家族が迷うことなく選択でき、精神的な負担を和らげられます。

自身の経済状況を把握・整理できる

  • 所有している財産を正確に記入する作業を通じて、現在の経済状況を把握でき、人生の終末期をどのように過ごすか計画し準備するのに役立ちます
  • 不明な資産や負債が明らかになり、相続トラブルの抑止にもつながります。

人生と向き合い、充実した残りの人生を送るきっかけとなる

  • エンディングノートを書くことは、自身の人生を振り返り、大切な人へのメッセージを残す良い機会となります。
  • やり残したことや、今後やりたいことなどを整理することで、残りの人生を計画的かつ充実して過ごすためのヒントを得られます。
  • 不安要素の解消にもつながり、「もしも」の時に備えることで、自分自身も安心して残りの人生を過ごすことができます。

自分の思いを伝える最後のメッセージとなる

  • 家族や友人への感謝の気持ち、思い出、そして形見分けの希望などを書き残すことで、口頭では伝えきれなかった深い愛情や感謝の気持ちを伝えることができます。

エンディングノートに記載すべき主な項目

エンディングノートに書く内容に決まりはありませんが、家族が役立つように以下の情報を記載することが推奨されています。

自身の基本情報

氏名、生年月日、現住所、本籍地、血液型、マイナンバー、運転免許証番号、健康保険証番号、学歴、職歴、資格、自分史、人生のターニングポイント、性格、信念、趣味・特技、好きな食べ物など。

家族・親族、友人・知人について

  • 親族関係図(特に離婚歴があり前妻や前夫との間に子供がいる場合、その子供の連絡先も)。
  • 大切な人への連絡先(友人、習い事、職場、金融機関など)。
  • 家族や友人への感謝のメッセージ、思い出、形見分けリスト。

財産・資産に関する情報

  • 預貯金口座(銀行名、支店名、口座番号)。ネット銀行やネット証券口座の情報も含む。
  • 有価証券口座(証券会社名、支店名、口座番号)。
  • 自宅に保管している高額な現金の保管場所、開け方。
  • 貸金庫がどこの銀行にあるか、貸し倉庫の場所や鍵のありか。
  • 不動産(所在、地番、家屋番号)、不動産購入時の契約書や領収書の保管場所(譲渡所得税の計算に重要)。
  • 名義預金や名義株(家族名義だが実質自分の財産とみなされるもの)。
  • 高額な絵画、骨董品、貴金属など(知識がないと価値が分かりにくいもの)の価値や購入費。
  • 自動車、貴金属などの所有物。
  • 借入金、クレジットカード、電子マネー、連帯保証債務など(マイナスの財産も重要。相続放棄の判断材料となる)。

保険に関する情報

  • 現在契約している生命保険、医療保険、介護保険などの種類、保険会社名、保険証書の保管場所、証券番号。
  • 保険証や年金手帳の保管場所、基礎年金番号。

医療・介護の希望

  • 延命治療の希望、病名告知の希望。
  • 介護が必要になった場合の希望(自宅か施設か)、介護費用の捻出方法。
  • アレルギー、持病、常備薬などの医療情報。
  • 臓器提供や献体に関する希望。

葬儀・お墓について

  • 葬儀の形式(密葬、家族葬など)、規模、呼んでほしい人。
  • 信仰する宗教、菩提寺の有無。
  • 遺影に使いたい写真。
  • 納骨方法、お墓の場所や種類、葬儀社の会員制度や互助会の情報。

自身のデジタル情報

スマートフォンやパソコンのログイン情報、登録しているWebサイトのID・パスワード、SNSアカウントのID・パスワード、オンライン口座情報、電子マネーアプリ、有料サービス(音楽、動画、電子書籍など)、写真や動画の保存データなど。

ペットについて

  • ペットの名前、年齢、性格、好き嫌い、病歴。
  • 自分の死後に引き取ってほしい人や団体。

エンディングノート作成のポイントと注意点

エンディングノートを作成する際は、以下の点に留意すると良いでしょう。

法的効力がないことを理解する

財産承継の法的効力を求める場合は、遺言書を別途作成し、エンディングノートと使い分けることをお勧めします。

保管場所に注意する

  • エンディングノートにはパスワードや貴重品の保管場所など、重要な個人情報が多数含まれるため、第三者に見られないよう厳重に保管する必要があります。盗難や詐欺被害のリスクを防ぐため、細心の注意を払うことが大切です。
  • ただし、いざという時に家族に見つけてもらえなければ意味がないため、信頼できる親族にエンディングノートの存在と保管場所を伝えておくべきです。
  • 金融機関にエンディングノートを預けるサービスを活用することも安心感を高めます。

書きやすい項目から始める

  • 完璧にすべてを埋めようとせず、書けるところから鉛筆で気軽に書き始めましょう。メモ程度に書き、考えがまとまったら整理するという進め方で構いません。
  • 書き方や順番に決まりはないため、自分が最も不安に感じることや、書きやすい項目から着手することが推奨されます。

定期的に見直し、書き直す

状況や考えは時間と共に変化するため、一度書いたら終わりではなく、定期的に内容を見直して更新することが重要です。年に1回など日付を決めて見直すと良いでしょう。記入日を記載しておくこともお勧めです。

家族と相談しながら書く

  • 身内と相談しながら書くことで、自分が見落としていた点に気づくことがあります。
  • 家族と「終活」について話し合うきっかけとしても活用できます。

「超重要メモ帳」として活用する

エンディングノートは、終活における様々な課題(認知症・介護、医療、葬儀・納骨、相続など)に気づき、対策を実行するための「超重要メモ帳」であり、「終活の全体像を知るのに便利」なツールです。

まとめ

エンディングノートは、法的効力こそ持たないものの、家族の負担を軽減し、自身の人生や財産を整理できる大切な記録です。遺言書と併用することで、法的手続きと心の準備の双方を整えることができ、残される人への思いや感謝の気持ちを形に残せます。重要なのは、完璧を目指すのではなく、思いついた時に少しずつ書き進め、定期的に見直すことです。もしもの時に備え、そしてこれからをより安心して生きるためにも、エンディングノートを今日から始めてみましょう。

面倒な相続手続き、専門家にお任せ下さい
目次