公証人(こうしょうにん)

遺言書の作成や重要な契約を考えるとき、「公証役場」や「公証人」という言葉を耳にすることがあります。これらは私たちの財産や権利を守り、将来のトラブルを未然に防ぐために非常に重要な役割を担っています。この解説では、公証人とはどのような専門家なのか、そして公証役場がどのような場所なのかを、相続や遺言の場面を中心に分かりやすく説明します。

目次

公証人とは

公証人とは、市民の生活や財産に関する権利を守り、法律トラブルを未然に防ぐため、国(法務大臣)から任命された法律の専門家であり、国民間の私的な法律関係を明確にするための国家機関です。

公証人の特徴

公証人には、他の法律専門家とは異なるいくつかの重要な特徴があります。

特徴解説
立場法務大臣が任命する「実質的な公務員」であり、特定の誰かの味方をするのではなく、常に中立・公正な立場で職務を行います。
専門性裁判官、検察官、弁護士など、長年法律実務に携わってきた経験豊富な専門家の中から任命されます。そのため、極めて高度な法的知識と経験を持っています。
役割既に起きてしまったトラブルを解決する裁判所とは対照的に、国民間の私的な法律紛争を未然に防ぐ「予防司法」という重要な役割を担っています。
収入源国から給与を受け取るのではなく、依頼者が支払う手数料によって運営されています。このため「手数料制の公務員」とも呼ばれています。

弁護士や司法書士との違い

公証人と弁護士や司法書士との最も大きな違いは、その立場にあります。

  • 公証人:常に中立・公正な立場で、紛争を未然に防ぐことを目指します。
  • 弁護士・司法書士:依頼者の代理人として、依頼者の利益のために活動します。

つまり、公証人は審判のように中立な立場から物事を証明する専門家であり、弁護士や司法書士は特定のプレイヤーの代理人として活動する専門家であるという根本的な違いがあります。

公証人の主な職務

公証人は、私たちの権利義務関係について明確な証拠を残すことで、将来の紛争を防ぐという目的のために、主に3つの重要な職務を担っています。

公証人の3つの主要な職務は以下の通りです。

公正証書の作成

契約や遺言などの法律行為について、その内容を公的な文書として作成し、証明する最も重要な職務です。これにより、内容の明確化とトラブルの防止を図ります。

具体的な例

  • 遺言書(公正証書遺言)
  • 金銭消費賃貸借契約(お金の貸し借り)
  • 不動産の売買・賃貸借契約
  • 離婚時の養育費や財産分与に関する契約
  • 任意後見契約

認証

個人や会社が作成した文書(私文書)についている署名や押印が、間違いなく本人の意思によってなされたものであることを証明する職務です。これにより、文書の真正性を公的に担保します。

具体的な例

  • 会社の設立時に必要な「定款」
  • 各種手続きで用いられる「委任状」

確定日付の付与

私文書に公証人が日付の入った印(確定日付印)を押すことで、その日にその文書が確かに存在したことを法的に証明する職務です。これにより、文書の作成日を巡る将来の紛争を防ぐことができます。

これらの専門的な職務は、「公証役場」という場所で行われます。

公証役場について

公証役場は、公証人が執務を行う事務所です。遺言書作成などで訪れる際に知っておきたい実践的な情報を以下にまとめました。

公証役場の基本情報

  • 概要と場所
    市役所などとは異なり、多くは街中のビルの一室に入居している独立した事務所です。全国に約300ヶ所あり、人口の多い都市部に集中している傾向があります。
  • 選び方
    原則として、どの地域の公証役場でも自由に選ぶことができます。公証人は元裁判官や元検察官が多く、その経歴によって人柄や話し方に特徴が出ることがあるため、自分との相性で選ぶという視点もあります。
  • 出張の依頼
    遺言者本人が病気や高齢で公証役場まで行けない場合、公証人に病院や自宅まで出張してもらうことが可能です。ただし、出張を依頼する場合は公証人の「管轄」が定められており、依頼できる公証役場が限定される点には注意が必要です。
  • 相談
    公証役場での相談は無料で行うことができますので、公正証書の作成を検討している方は、まずは気軽に相談してみることをお勧めします。ただし、公証人は多くの案件を抱えており日によっては対応が難しい場合もあるため、相談を希望される際は事前に予約を取っておくことが大切です。

公文書の効力・目的

裁判が問題発生後の「事後救済」であるのに対し、公証制度は「紛争の事前防止(予防司法)」を目的としています。その中心となる「公正証書」は、まさにその目的を達成するための強力な法的効力を持っています。

公正証書には、私人が作成した契約書などにはない、主に2つの強力な効力があります。

効力解説
高い証拠力公証人が内容を確認して作成した公文書であるため、極めて高い証拠力を持ちます。万が一、裁判になった場合でも、文書の存在や内容について立証に苦労することがなく、極めて有利に手続きを進めることができます。
執行力金銭の支払いに関する契約(養育費や金銭貸借など)において、**「強制執行認諾条項」**という一文を盛り込むことで、絶大な効力を発揮します。もし相手方が約束通り支払いをしなかった場合、通常は裁判を起こして判決を得なければ財産の差し押さえ(強制執行)はできません。しかし、この条項があれば、裁判所の判決を待たずに直ちに給料や財産を差し押さえる手続きが可能になります。これが公正証書が持つ最も強力な効力です。

遺言における公正証書のメリット

特に相続や遺言の場面において、公正証書で遺言を作成することには、以下のような大きなメリットがあります。

  • 遺産相続をめぐる親族間のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな相続手続きを実現します。
  • 法律の専門家である公証人が作成するため、方式の不備で遺言が無効になる恐れがありません。
  • 遺言書の原本が公証役場で厳重に保管されるため、紛失したり、誰かに偽造・変造されたりする心配がありません。

まとめ

公証人は、中立・公正な立場から法的な証明を行い、トラブルを未然に防ぐ役割を担う法律の専門家です。特に相続や遺言の場面では、遺言書の方式や内容に不備がないよう確認し、法的に有効な形で意思を残すために重要な存在といえます。なかでも「公正証書遺言」は、最も確実で安全な遺言の方法として広く利用されています。

ただし、公証役場での手続きには事前の準備や資料の整理、文案の作成などが必要となるため、個人で進めるには不安や負担を感じる方も少なくありません。
当事務所では、遺言内容のご相談から文案作成、公証人との日程調整まで、すべてをスムーズにサポートいたします。

ご自身の想いを正確に伝えたい方、将来の相続トラブルを防ぎたい方は、ぜひ一度、行政書士にご相談ください。あなたの大切な意思を、確かなかたちで残すお手伝いをいたします。

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